「…な…イワン?」
「…はい…」
「俺のナカでイきたい?」
「もちろんッ!」

 小首を傾げて問いかければ即答で返ってきた。思わず瞬いていると、我に返ったのだろう…はっ…とした表情をして慌てだした。

「あ…え、えと…」
「ふふ…素直な子は好きですよぉ〜」

 いつまでも変わらない性格に笑いを漏らすと、上体を反らして足を思い切り開く。すると、自ら秘所を探り当てて良く見えるようにと割り開いた。

「ッ!」
「ほら…見えるか?…イワンがたっぷり注いだ分が出てきちまってる…」
「…ぁ…ぅ…」
「っん、とに…いっぱい…」

 指の間に見える菊華が、虎徹が話す度に…ひくり…ひくり…と蠢く。魅入っている間にも蠢く華はその口から白濁の蜜を溢れさせ始めた。
 口を伝い、内腿を流れ落ちる動きに一つ熱い息を零した。ナカからどろりとした蜜が溢れ出る感覚に、ふるり…と躯を震わせ宙を彷徨わせていた視線をイワンの貌へと落としていく。
 そこには、紫色の瞳に飢えた光を宿してじっと見つめる雄の貌があった…

「ぁ…ん、ふっ…!」
「こ、虎徹殿ッ…!?」

 ひくひくっ、と震える華に釘付けになっていると、そろりと指が撫でてナカへと埋め込まれてしまった。途端に弾き出された甘い声に見上げれば虎徹が顎を仰け反らせている。

「ん、まだ…やぁらかいな…」
「…ぇ…!?」

 ぴくっ…ぴくっ…と肩を跳ねさせる躯を見上げていると、衝撃が治まったのか、ゆるりと頭を下げる。振り乱された黒髪が頬に張り付き妖艶な貌を見せる虎徹に、喉を鳴らしていれば…ぷちゅっ…と小さな音が聞こえた。

「あ、は…聞こえる?このやぁらしい音…イワンのでぐちょぐちょだもんなぁ…」
「〜〜〜ッ」

 蕩けた琥珀の瞳が見下ろすのにつられて視線を下ろしていけば、透明な蜜を零す雄の更に下へと潜り込ませた手に辿り着く。腿の間に位置する暗がりに蠢く指の形が確認できた。僅かに首を捻って覗き込んでみれば、ぬらりと光る蜜を纏わせ動いている指が見える。

 指が動けば動くだけ濡れた音が奏でられ、コーラスのように虎徹の悩ましげな嬌声が混ざっていた。頭の中が沸騰しそうなほどの興奮の中、己の上で乱れる肢体に手を伸ばす。

「…ぁ…ぁ…」

 ぷくりと紅く熟れた胸の実に指を伸ばし弾けばぴくっと鋭く反応を返してくれた。邪魔をしたかも…と尋ねるように見上げれば、うっとりとした表情に、細く零れ落ちる嬌声が心地いいのだと教えてくれている。お咎めのない事をいいことに、手をさらに這わせていった。
 脇腹へ、腹筋の割れた下腹へ…内腿にも指を這わせると、ふるりと肌が震え、卑猥な音を奏でていた指が抜け出てくる。

「っは…ふ、ぅ…」

 ゆるりと動く瞳がイワンを捕らえると、紅い唇が淫靡に歪む。

「…入れるぜ?」
「はっ…はい…!」

 再び剛直に育った楔を握られると、見せ付けるようにして脚を開き秘所をあられもなく晒してきた。目の前に広がる光景を一挙一動見逃すまいと、集中していく。
 真摯に見つめて来る視線に晒されながら、虎徹は腰を浮かせると宛がった楔を飲み込ませ始めた。入りやすいようにと出来る限りリラックスして、腰を落としていく。

「…っあ…あぁ…」

 内臓が押し上げられるような圧迫感は何度しても慣れる事はない。けれど、満たされると思えばこのくらいの苦痛など取るに足らないものだった。熱い楔に内壁を焼かれ、擦り上げられながら奥へ奥へと飲み込んでいく。

「…ん…ぁ…」
「…はい…った…」

 ぺたりと湿った肌が密着した。楔の先端が最奥をコツリと叩き、背筋をぞくぞくと快感が駆けあがる。躯の中でどくどくと脈打つ感触に繋がった悦びが溢れてきた。一つ息を吐き出してゆるりと首を傾げると小さく笑いを零す。

「や、べ…」
「んぅ…ぇ…?」
「…すぐ…とんじまいそう…」

 ふわふわと浮かされた声で囁かれる言葉は媚薬のようで……興奮を煽っては呼気を乱していく。

「んっ…あぁ…!」
「っん…ッふ…」

 躯の中に熱を感じるだけで果ててしまう程の悦楽が這い上がってくる。けれど、もっと……もっと……と強請る本能に応えて腰を持ち上げるとすぐに落とした。ナカを擦り上げる楔がイイ所を掠める様に上体を反らす。動けば動くだけ溢れ出るイワンの声を聞きながら、虎徹は上下に躯を揺さぶり続けた。

「…こてつ…どの…」
「あッ…ふ、ぅん、あぁ!」

 己の躯の上で腰を揺らす虎徹の媚態にますます息が乱れる。視覚的にも、肉体的にも『犯されている』という表現がぴったりはまるのだが、不思議と抵抗はなかった。けれど、虎徹ばかりに与えられるのは性に合わない、と手を伸ばして、躯が弾む度に揺れる雄を捕まえる。途端にびくびくっと跳ねる躯と仰け反る顎、きゅうっと絞まる菊華にこれ以上はないと思っていた興奮を叩きこまれた。

「あッあぁあッ!」

 握られた雄、イワンの作る指の輪が腰を振る度に扱き上げられて堪らなく気持ちいい。後腔を擦り上げていたはずが、いつの間にか前を扱き上げてもらう為に動いているようだった。がくがくと揺れる躯はすでに手綱を引きちぎり、与えられる悦楽ばかりを追い求めている。止められない律動に開いた口は閉じる事を忘れ、唇の端から唾液が伝い落ちて行った。

「あっ、イ、ぃっ!きも、ちっ、いぃいッ!」

 悩ましげな表情で啼き狂う虎徹にイワンは瞳を細める。飼い慣らせないと思っていた獣を捕らえられたような優越感に駆られていた。手の中に包み込んだ雄が擦りつける様に腰が振られ、咥え込んだ楔を離すまいと絞め付けられる。脇腹に擦れる内腿が痙攣を始め、虎徹の嬌声が間隔を短くしていった。

「ぁんんッ!んっ、いッ、あ、あぅうッ!」
「いい、ですよ…イって、ください…」

 すぐそこに迫る絶頂に思わず尻ごみをしそうになっていたら、腹筋と足を使ってイワンが突き上げてくる。最奥の更に奥まで突きぬかれそうな攻め立てにまともな言葉すら紡げずにいる。腰の動きに合わせて打ち付ける楔に目の前が真っ白に染められていく。

「いっ、いわ、んんッ!」
「は、い…ッ」

 蕩け切った貌をしながらも懸命に伸ばしてくる手に指を絡めつけて、手の中でぴくぴくと跳ねる雄を腰の動きに合わせて扱きあげる。すると重ね合わせた手がぎゅっと握り締められ甘い咆哮を放ち白い蜜を噴き出した。連動するように絞め付ける内壁に眩暈を起こしながら、欲望をぶちまける。

「ふっ…あ、あ、あ…」

 重くのしかかっていた快感を解放する悦びと、腰の奥に叩きつけられる欲望の熱に躯中が悦楽に打ち震える。吐く息にすら嬌声が混ざり、舌が甘く痺れていた。しばしの余韻を味わいくたりと力が抜けて崩れ落ちる躯を、イワンの腕が抱きとめてくれる。

「…ん、ぅ…」
「大丈夫…ですか…?」
「…ん、へーき…」

 どこもかしこも甘い痺れで満たされて上手く動かせない。なすがままに凭れかかっているとそっと横たえてくれた。労わるような口付けが顔中に施され、くすぐったくて気持ちいい。
 けれども……

「…あ、の…イワン?」
「…はい…?」

 体勢としは寝転がされているので楽といえば楽。だが、繋がった場所は未だに解かれず、足を押し開かれたまま。それどころか、咥えたままの楔がじわじわと熱を帯び脈動を始めている。…とく…とく…と内から響く音に背筋がぞくりと震えた。

「え…と……もう一回…とか?」
「はい…まだ…治まりそうにないので…」

 若者の体力は熟知しているつもりだ。回復力も年老いた自分なんかじゃ太刀打ちできないのも理解出来ている。だが……しかし……

「げ…元気すぎない?」
「すいません…虎徹殿のナカが気持ちよくて…」
「そ…そりゃ…良かった…けども…」

 囁かれる声は熱に掠れ、這わされる舌が熱くて唇から漏れ出る呼気が興奮しているのか乱れたままだ。しかも、動きが止まっていたはずの腰がじわりじわりとこちらが焦れるほど緩やかな動きを繰り返し、治まったはずの熱を再び炙り出している。
 虎徹としてはそろそろ眠気が襲いかかり始め、出来ることならばふわふわと心地いい感覚のまま眠ってしまいたいところなのだが……
 耳や首筋を甘咬みされたりねっとりと舐め上げられていると、じわじわと湧き出てきた甘い痺れのような感覚が腰の奥に溜まり始める。自分から太股を擦り寄せて強請ってしまいそうなほどに焦れる快感に、眠気など吹き飛ばされてしまった。

「あっ!?」
「失礼…仕る…」

 うっとりと瞳を細めていると急に両足を持ち上げられた。温かい躯から引き離されて冷たく感じる空気に爪先が、きゅっと丸くなる。どうしたのか、と見上げてみると獰猛な肉食獣を思わせるイワンの貌があった。
 その表情の変化に、きょとり、と瞬いていると楔が内壁を抉ってくる。

「ひ、うぅッ!!!」

 ナカを捩じられるような感覚に声を上げると上体が横向きになったのが分かった。涙の滲む視界で、何度か瞬いていると再び同じ感覚に襲われる。楔の抉る位置の変化に内壁がすぐ対応出来ず、背を仰け反らせ戦慄き続けた。何度か呼吸を繰り返す内に慣れ初めシーツに顔を伏せた状態に気付き、縋る物を求めて握り締めると自分の取らされている格好をようやく理解する。

「!」

 獣そのものの姿。膝を立て、猫が伸びをするように腰だけ高く上げて伏せている姿だ。しかも、愛でるように突き出した尻を撫でられて、あまりの羞恥に全身からぶわっと汗が噴き出した。

「っぁ…今…絞まりましたね…」
「〜〜〜ッ」

 思わず菊華まで引き絞ってしまい、背筋がぶるりと震える。更にイワンが指摘などしてくるものだから余計に意識してしまった。思わず逃げようと腕を伸ばすのだが、人質のように萎えた雄を握り込まれてなけなしの抵抗すら容易く押さえ込まれてしまう。その上、暴れたせいかナカで楔が擦れてしまい、ぞくぞくっと肌を嬲るように快感が走り抜けた。乱れた呼気をどうにか和らげようと荒く息を吐き出していると、むに、と押し広げられる感覚がある。

「やっ…あッ!」
「……すごい…ナカから…零れ出てますよ…」

 普段晒される事のない場所が引っ張られる感じに身じろぐが、掴みかかる指は離されずに広げられた口の回りをなぞられた。
 突き出した腰へ躯を密着させ、桃尻を割り開けばいっぱいに口を開いた菊華が見えた。グロテスクに育った己の欲望を咥え込む口は慎ましげに閉じようとしているのだが、指でなぞればひくひくと震えてナカに注ぎ込んだ白濁の蜜を零し始める。熱い粘膜に咥えられた楔がひくつく度に美味しそうに食まれ、ますます欲望を固く大きく育て上げていた。

「…あ…あぅ…」

 きゅっと口を窄めさせて隙間なく咥えているはずなのに、ぐにぐにと桃尻を揉み込む手と、口をなぞり続ける指にまだそれ以上咥えられるよう広げられている気分になってくる。ナカを暴かれる心境に心がざわめき続けた。

「ッふ、うぅ…!あぅっ!!」

 焦れ過ぎて頭がどうにかなりそうだ、と意識が朦朧とし始めた頃。ナカでじっとしていた楔が急に抜け出ていった。引きずり出されるような感覚に息を詰めると、パンッと乾いた音を立てて肉がぶつかる。喉の奥から押し出されるような嬌声を弾き出すとまた抜け出ていってしまう。

「ひっ…ぃあっ!」

 眼下に広がる光景に喉が干上がりそうなほどの興奮に見舞われた。
 腰を引けばぬらりと光る楔に白濁の飛沫が絡みつき、押し込めば…ぐぷっ…と音を立てて口の端からとろりと溢れ出てくる。間髪入れずに繰り返せば、はちみつをかき混ぜているような…ぐちゅっ…ぐちゅっ…という卑猥な音が奏でられる。

「…ぃやらしぃ…」

 耳をふさぎたくなるような厭らしい音に混ざってぽつりと零された言葉に躯が熱を放つ。先ほどまででもひくひくと震えていたのに感じる悦楽が許容範囲を容易く超え、感電させられているかのようにびくっびくっと大きく跳ねた。逃げたいのに突き込まれる楔が許してはくれず、更なる高みへと押し上げてくる。

「もっ…もっ、や、らっ!おかひ、くっぁあ!」

 撓る背に、呂律の危うくなり始める嬌声、欲望を咥えこむ内壁がうねりを加え、絶頂へと導いていく。握り締められたシーツが虎徹の躯を中心にドレープを描き出し、振り乱される髪が乾いた音を立てる。口では「嫌だ」と叫ぶくせに躯は貪欲で、もっと奥深くに楔を当てようとしているかのように腰を突き出してきていた。

「あッひぃっん!あ、あぅッ!あぁあ!!」

 意味ある言葉すら紡げなくなった舌は何かを求めるように唇から突き出されたまま、零れ出る唾液が顎を伝いシーツにシミを作る。人質だった雄はとっくに開放されているのに、この攻め立てから逃れられないでいた。それどころか、もっと、もっと、と更なる快感を求めて自分からも腰を振ってしまう。
 ぞくぞくっとした悦楽が背筋を走り、間隔が短くなってきた。何もかもが朦朧とぼやける中で、イワンの熱だけがはっきりと感じられる。

「あぁ!あぁぁ!ああぁぁぁーッ!!!」

 『その瞬間』は突然襲い掛かってきた。
 躯の中で何かが弾け飛ぶと同時に腰が跳ね上がる。突き上げ続けていた楔が信じられないくらい深く突き刺さり、足がシーツを蹴った。捕まえられた腰のせいで逃れる事は叶わず、目の前がチカチカと明滅を繰り返す程の衝撃に見舞われる。

「ッく、ぅぅぅ…!」

 一際大きく跳ねた躯を押さえつけ、強すぎるほどの締め上げを味わったイワンはクラリと眩暈に襲われた。深く、より深く刺さった楔が柔らかく熱い内壁に包み込まれ、絞め付ける菊口とは裏腹にやわやわと蠢き緩やかに絞め上げてくる。顎を仰け反らせて…ぶるり…と躯を奮わせると、マグマの如く溜め込んだ飛沫を吐き出した。
 痙攣していた内腿が正常に戻り始め、恍惚とした悦楽の只中で愛おしい躯に抱きつき互いの呼吸を重ね合わせる。しっとりとした互いの肌で互いの体温を感じ取って余韻に浸っていた。

「…こてつどの…」
「… … …」

 整いだした呼気をゆるりと吐き出してそっと呼びかける。けれど、返事はおろか、反応も返ってこない。首を傾げつつ顔を覗き込むと瞳は閉じられ、ぐったりとしていた。

「(…ヤりすぎた…)」

 自分に向けて苦いため息を零し完全に力の抜け切った躯を支えつつ、萎んだモノを引きずり出すと支えた躯がぴくりと跳ねた。無意識の中でも感じてもらえたことに笑みを浮かべていると、楔を咥え続けていた菊華から…こぷり…と白濁の蜜が流れ出てくる。咥えるものをなくした口は物寂しさからか、はくはくと開閉を繰り返し、まるで誘っているように見えた。
 意識をなくしても妖艶な虎徹に思わず喉がなってしまう。

「…愛してます…虎徹殿…」

 聞いていないと分かっていながらもそっと囁き、額に口付けるとぐたりと横たわる躯を抱き込んで眠りについた。


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