虎徹の体がイワンの上に覆いかぶさるような体勢にされていて、自重によって欲望を深く咥え込みすぎたらしい。腕で体を支えればなんてことはない…ちゃんと好きなように咥えられる。
「…一言声かけてから変えろよな…」
「だって…美味しそうにしゃぶってらしたから…」
「…〜…うっせ…」
暗に…夢中だったから…と言われて恥ずかしくなった。照れ隠しに離した欲望を再び咥え込むと、胸の下にある腹筋が震える。その反応が嬉しくて…もっと感じるように、放り出された足にも手を沿わせて敏感な内腿を撫で摩った。
「んっ…く…」
「…ひもふぃい？」
「っえぇ…とても…っ」
「ん…ふ…」
素直な返事に気を良くした虎徹は陰嚢にも指を沿わせて大胆にしゃぶってやった。
そんな虎徹の愛撫に熱い吐息を吐き出し、イワンも手を伸ばす。己の頭を跨ぐ様にさせた結果、口のすぐ前にぶら下がる欲望に舌を伸ばした。表面をちろりと舐めるだけで腰が跳ねて遠のいてしまうのを、腰に腕を絡めて固定してしまう。己の欲望を咥えた口の中で舌が跳ねて震えて…そんな虎徹の小さな反応を感じ取っているとふと目についた…
「ぅお！？」
予期せぬ場所への刺激に虎徹は上体を跳ね起こした。ぶわっと毛を逆立てるように全身へ広がる感覚には覚えがある。
「ちょっ…イワンっ！」
慌てて振り返るも、止まることはなく…今しがた嬲られていた菊華をねっとりと舐め上げられてしまった。ぬるぬると行き交う舌が背筋をぞくぞくと震わせ体から力を奪い去る…目の前にそそり立つ熱塊を口に咥えたいのに、上手くいかなかった。
しかも、舐めるだけに留まらず…じわりと蜜を滲ませる楔を指先で嬲られてまともに言葉すら紡げない。
「ぁ…っあぅ…うぅ…ッ…」
蜜に塗れた楔の根元…そのラインを辿ったところにある菊華がひくひくと蠢く様に思わず舌を這わせたのだ。表面を伝わせれば…きゅ…きゅ…と窄まる華は、敏感に反応を示しイワンの舌を愉しませている。しかも、感じ過ぎるのか、上に乗った躯がぴくぴくと忙しなく跳ねて…拘束を施した腕から逃れようと腰が揺れていた。
「ッや…や、めっ…」
「…ろうひて…れすか…？」
「んふっ…ん、って…きた、な…」
「さっき…入念に洗いましたよ？」
「っで…もっ…！」
「それにしっかり濡らさないと…」
「ん、じゃっ…ローション、とかでっ…」
「用意してません。」
「なっ？！」
女性相手の時に使う器官と違って…男同士の場合は自身で濡れる事のない場所を使うのだ。だもんで、『濡らす為』のものが必要になる。代表的なものでローション…代用としてボディクリームや、オイルなどはあるが…何にせよ…用意されていないなんて思いもしなかった。
「よっ、用意して、ないって！？」
「大丈夫です…僕がちゃんと濡らしますから」
「ぃやっ、でも！んなとこ舐められるとかっ…」
「？…嫌ですか？」
「嫌…っつか…された事ないし…させた事ないし……むしろ…居た堪れなくて…」
不思議そうな声にしどろもどろ答えると、イワンの動きが止まった。解放してくれるのか…と思わずほっとしていると、音を立てて吸い付かれてしまう。
「ぅあぁ！？」
「…こうされるの…初めてですか？」
「んぅっ…っから…」
「じゃあ…入念にさせてもらいます」
「っひぅう！！」
素直に答えたのが仇になってしまったようだ…さらりと宣言したイワンの舌がべろり、と舐め上げてきた。反り返る背によって腰を逃がそうにもガッチリホールドされてしまっていて叶わない。それどころかもっと押し付ける様に引き寄せられてしまった。
「…くっ…ん、ぁ…ぅんんっ…」
尻全体を解すように揉み上げられ、割り開かれた秘所に舌が這いずり回る。ぞくっぞくっと駆け上がる耐え難い快感の波に躯の力が抜けてきた。イワンの脚の付け根辺りに額を押し当てて喉の奥から押し出される声を溢し続けると、飲み込みきれない唾液が口の端を伝う。
「ふっ…はぁ…」
「…ひくついきましたよ」
「ぁ…やっ…」
「物欲しそうに開いたり閉じたり…厭らしいですね？」
「だっ…も、っ…だま、れ…！」
ちゅっ…とバードキスのような音を鳴らしながら囁かれる言葉に躯中が熱く火照っていく。意趣返しをしようと思うのに痺れたような躯は言う事を聞いてくれなかった。目の前の体にしがみつくので精一杯だ。
舌先できゅっと寄せられる皺をなぞりながらひくひくと震える躯を手で味わう。時折ふわりと綻びを見せる菊華に瞳を眇めると指を宛がった。
「ッひ…！！」
「……あぁ…」
ぬるり…と己の唾液で滑る指先が中へと吸い込まれていく。第一関節まで潜り込んだ指はきゅっきゅっと締め上げられ、排除したいのか、蠢く菊華に咥えられていた。その光景に思わず熱い息を吐き出す。
「っく…ぅ…っ…」
久々に味わう異物感は、不快というよりも求めすぎたせいか、息苦しさばかりを与えている。きゅっと締める度にぞわぞわと走り上がる感覚に伏せたままだった上体が反り返ってしまった。いつまでも動きのない指に焦れて腰が揺れ動く。けれどイワンの手が掴んでいるせいか、己の躯が満足する動きには程遠く、もどかしさばかりが降り積もっていった。
「…っは…ぅぅ…ぁ…」
黒髪が撓った背に掛かるほど反り返った虎徹の背をじっと見つめていたイワンは、途切れ途切れに吐き出される嬌声交じりの吐息に指を動かす事を失念していた。男同士の交わりにどこを使うのか、といった知識はもちろん仕入れてはいたのだが…目の前で背を反らして震える躯に、ここまで感じてもらえるのだ、と感動してしまっている。もじもじと揺れる腰に唾を飲み込むと指を咥えた菊華の淵を丁寧に舐めて濡らし、指を更に埋めていった。
「んっ…くっう、あ！」
ずるり…と内壁を擦り奥へ奥へと割り込んでくる指に、びくっびくっと跳ねる躯が信じられないくらいに感じ入っていて困惑が引き起こされる。すでに理性が吹き飛びそうになりつつもギリギリで踏み止まり、あられもない言葉は紡がずに済んでいた。けれど、それもいつまで保てるか分からない。
「…ん、くっ…ぅんッ…」
内壁をぐりぐりと容赦なく擦りつけてくる指は、時折、曲げられてはナカを押し広げていく。圧迫感と、久しぶりに広げられる胎内に躯中が戦慄いていた。
指を咥えてなお、ひくつき始めた菊華はきゅっきゅっと絞め上げてはふわりと綻び、内壁が撫でる指を揉み上げる様に絡みついてくる。ゆるり…とした動きで出して挿れて…と繰り返しても動きに合わせて締めつけ弛めて…と繰り返す菊華にもう一本指を増やしてみた。
「っふ…ぁッ！」
ぐっと増えた圧迫感に腰を逃がそうと蠢くが、深く突き入れられた指が余計に擦れて悪循環を繰り返し始める。しかも、指の動きはぎこちない出し入ればかりの繰り返しから、ナカの絞まり具合を確かめるように、単調な動きから一変してしまった。ぐるりと円を描くような動きに変わったり…最奥を目指すつもりなのか、指の付け根が股上に当たるまで深く潜り込んだり…予測出来ない動きに背筋を走り抜ける快感が治まることはなく、むしろ更に掻き立てられている。
「ぃ、わんっ…」
「あ…苦しいですか？」
「ち…っが…」
ぐにぐにと指を動かせば動かすほど、口の形を容易く変えて食み続ける菊華にくぎ付けになっているとか細く囁く声で呼びかけられた。容易に指を咥え込む華に熱中し過ぎたと、気付かされて慌てたが…ふるふる…と揺れ動く髪に首を傾げる。
「も、ど…かしぃっ…」
「え？」
「…もっと…ほしぃ…」
じわりと浮かび上がっている汗で淡く光を纏う背中…起こされたままの上体を支える為に突いた腕が震えているのが見えた。残念ながら顔は見えないが、語尾が弱く消えていく雰囲気からして恥ずかしがっているのかと思われる。
…ちゅぷっ…と音を立てさせて指を抜き去ればびくりと躯が大きく震えた。素早く虎徹の下から這い出ると黒髪に隠された顔を見上げた。
「…っ…」
蕩けた表情の虎徹がイワンと目線が合った途端に頬を真っ赤に染め上げ顔を強張らせる。陶酔していたのだろう、慌てて顔を背ける様が肯定をしていた。
そんな虎徹を引き寄せたイワンは首に腕を巻き付けさせると頬に口づけてそっと押し倒す。
「…虎徹殿…」
「…ぁッ…」
見上げた先に、逆光の中、薄く影を纏ったイワンの貌…劣情に掠れた声で呼ばれると同時に下肢へ熱が押し付けられる。ぬるりと滑る熱塊を、己の雄に擦りつけられた。にゅるにゅると滑る楔に、この先、訪れるだろう悦楽に躯の芯が震える。自然と乱れる呼気に口を開けば、擦り寄るように唇が寄せられた。
「…いぃ…ですか…？」
興奮で掠れたのだろう声が唇に吹き掛けられる。擦れ合う唇が柔らかく、答えを囁く代わりに首へ回した腕で引き寄せて重ね合わせた。
「…んっ、ふ…」
「…ん、ん…」
二つの声が混ざり合う口内で互いの舌を絡め合わせる。
腰を挟む様にして立てられた足の間、蜜を垂れ流し続ける雄の根元をそろりと撫でた。ぴくっとすぐに反応を返す躯に満足して己の欲望を鷲掴む。場所を探る様に雄の裏筋をなぞり下りればひくひくと息づく菊華に辿り着いた。すると首に回された腕に力が籠り腰へと寄せられた膝がすりすりと擦りつけて来られる。
「っん…ぐ、ぁッ！」
「…ッく…」
ずぐっ…と音がしそうなくらい容赦なく突き刺された楔に喉が、背が仰け反り唇が解けてしまった。あれほど蕩けそうなくらい熱に浮かされていた躯に、びりっと感電するような感覚が走り抜ける。思った以上の太さに菊華が喚いたのだろう。霞む視界でぼやける天井を睨みながらどうにかやり過ごしていた。すると、首元に顔を埋めてきたイワンの口から息を詰める様な声が聞こえる。
「ぅ…っあ…」
「んっ…ぅ、え…ぁ？？」
一番太いだろう、亀頭が潜り込み奥へと深く突き刺される覚悟をしていたら、抱きついた躯がぶるり、と震えた。「おや？」と思うと同時に咥えた楔が大きく脈打ち、腰の奥が熱くなっていく。耳元で小さく喘ぐ声を聞きつつ、躯の中が焼かれそうな熱にぎゅっと瞳を閉じた。
「…っんん…く…」
「っす…み、ませ…」
ナカを満たす熱に悶えていれば、イワンの掠れる声が聞こえる。欲に溺れて掠れた…というより、情けなくて掠れた、といった声音だ。
「ぁ…やっぱ、これ…イっちゃったんだ？」
「…うぅ…」
入れただけでイってしまった事にイワンはなけなしの男のプライドが崩れてしまったのだろう。ぎゅっと抱きつき、ぷるぷると震えている。そんな彼を宥めるように虎徹も後頭部を撫でてやって見えない事を良い事に苦笑を浮かべた。
『若さゆえの暴走』といえばいいのか…
ひしっとしがみついている状態からして顔を見られたくない心情がよく伝わる。恥ずかしい…悔しい…情けない…彼が今感じているだろう感情を粗方理解して虎徹はきゅっと抱きしめた。
「…なぁ…イワンー？」
「…ぁぃ…」
返事する声がもう泣き声と言ってもいいだろう「しょうがないなぁ…」と淡く笑みを浮かべながら虎徹はもう一度呼びかけた。
「イワン？」
「…ぁい…」
「…イっちゃったのは…俺の躯が気持ちよかったから？」
「…ぇ…？」
「それとも…俺と一つになれて嬉しかったから？」
「っ両方です！」
下手に慰めるよりも達した理由を明確にする方が傷が浅く済むだろう、と思った結果の問い掛け。その選択は間違いではなかったようで、首に埋められていた顔ががばっと持ちあがり、その反動で中途半端に埋められてた楔がナカを擦り上げる。
「っ…おま…」
「え？だ、大丈夫ですか？！」
「だいじょぶ…けど…元気すぎ…」
息を詰めてやり過ごす事が出来たが、躯を焦がす熱は煽られてもどかしさに拍車をかけている。瞳を眇めていると、滲んだ視界の中でおろおろとした表情のイワンが見えた。
「（…こういうところは…変わってないな…）」
と小さく笑みを零すと、達したばかりのはずの楔が未だ萎えていないことを感じ取る。それとともに悦びに浸っていた。
「奥…まで…」
「え？」
「…奥まで…咥えさせて…」
密着した腰に太股を擦り寄せ、離れてしまった首へと再び腕を絡める。…ごくり…と生唾を飲み込んだ喉の動きを見上げながら再び覆い被さるイワンを見つめていた。
「…ぁ…んん…」
ずりずりとゆっくり這い上がるように腰を押し進めれば、虎徹の眉間に皺が寄る。けれどそれは苦しみに対するものではなく、どこか恍惚とした、陶酔した雰囲気で酷く婀娜っぽい。ゆるく振られる髪が小さく音を立ててシーツを叩き、閉じられた目尻が紅く染まっていく。戦慄く唇から零れる啼き声が背筋を震わせた。
「っは…ぁ…ぁ…」
「…ふ…ぅ…」
少しでも圧迫感を和らげようと息を詰めないように努めていると、イワンの動きが止まる。それと同時に臀部へと肌が密着した。
「（…あぁ…全部入ったんだ…）」
と、ぼんやり理解していると、ナカへ差し込まれた楔が…とくり…とくり…と脈打つ鼓動を感じ取る。
「…ぁちぃ…」
「！」
うっとりと囁かれる言葉を目と鼻の先でしっかりと聞き取った。ゆるりと弧を描く瞳…涙が滲んでいるのだろう、ゆらゆらと水面に浮かぶ光のように美しい色に反して、囁いた声音は欲に掠れ、快楽に溺れ、熱に浮かされたもので…酷く卑猥だ。今しがた囁きを零した唇も、口付けに濡れて光を纏い紅く熟れている。
強烈としかいいようのない淫媚な姿にイワンの躯中が大きく脈打つ。
「〜〜〜っ」
「んっ…あ…！」
突然、震えて大きくなり始めた楔に敏感な菊華を更に押し広げられて啼き声を上げてしまった。くっ…と息の止まるような感覚と、ぞくぞくと背筋を這い上がる悦楽に躯がひっきりなく震えてしまう。
「な…に？…いきなり…おっきく…」
「こ…こてつ…どのが…」
「う、んっ？」
「…えっち…すぎ、てっ…」
「はっ…あお、られちゃ…った？」
「〜〜〜ッ」
俯き必死で顔を隠そうとするイワンを見上げながら小さく笑い声を漏らすと、菊華に咥え込んだ楔の感覚をまざまざと感じ取ってしまう。さらに、ぐぐっと楔が大きさを増していくので……
「（…壊されるかも…）」
と、他人事のように考えてしまった。
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