※『スザク氏ハピバ。』の続きになります。



「ルルーシュ…」

 抱き締める腕の力が強くなる。息が詰まることはないがスザクの感情を表した行動は少々気恥ずかしくてくすぐったい。自分はいつからこんなにも好きなったのだろう?そんなことを考えながら、自分より少し逞しい背中に腕を回した。

「…ぁ…」

 そっと細い顎を捕らえ、上を向かせると戸惑いの色が浮かんでいた。ふわりと微笑みを返せば照れたように視線を反らされる。顔を近付けるとピクっと肩が跳ねた。間近まで近付けるとじっと見つめられる。

「キス…していい?」

 そう尋ねれば眉間にシワを寄せたがすぐにぎゅっと瞳を閉じて僅かに上を向いた。お許しが出たらしい。

「…ん」

 軽く触れるだけのキスを何度か繰り返し、ルルーシュの肩から力が抜けるのを辛抱強く待った。すぅっと肩が脱力したのを見計らって微かに開いている唇から舌を差し込むと抱き締めた躰がびくりと跳ねる。

「っん…くふ…ぅんッ」

 上顎や舌、歯列をなぞると小刻みに震えて必死にしがみついてくる。濡れた音を散々響かせて漸く解放すると熱に浮かされたアメジストの瞳がとろん、と見上げてきた。背筋がぞくぞくっと震える。

「ルルーシュ…このまま抱いてもいい?」
「え?」

 唾液で濡れた唇が朱を深めて艶々と光る様はまるで口紅を引いたようで艶めかしい。指でそっと撫でると頬に赤みが差した。
 立ったままのスザクに抱き締められているせいで同じ身長なのに見下ろされる格好になっている。ずれた躰の位置のせいで腹に当たるスザクの高ぶりに気付いてしまい思わず瞳を泳がせた。

「いやなら…しない」

 そう告げるが同じ男としてこの状態はかなりキツイはずだ。けれどルルーシュを気遣って無理強いはしないと言う。
 でも、ルルーシュが気になっているのはそれと別ににもう一つある。

「スザク…」
「うん?」
「俺は…男、だぞ?」
「あぁ、男同士だと出来ないって思ってる?」
「う…あぁ…出来るもんじゃないだろ?」
「じゃあ、任せてくれる?」

 言うが早いか動くが早いか、ルルーシュの上体をベッドに沈めその上にのしかかる。

「す…ザク…」
「大丈夫。俺に任せて?」

 長い髪を一房掬い上げてキスを落とす。安心させる為なのだろうが、逆に心拍数を上げるだけだ。
 室内灯の逆光の中、スザクの瞳が猫のように煌めいて見える。獲物を目の前にした肉食獣のように、欲に煽られた男のように。その表情に目が釘づけになっていると額や目尻、頬と口付けを振らしてきた。くすぐったさに身を捩ると口付けは首筋へと降りて来た。

「ひぁッ…」

 ぺろりと舐められて思わず声が上がってしまう。自分のものとは到底思えない声に動揺が隠せない。手で口を塞ごうとしたが、スザクに阻まれてしまった。

「ッ…すざっ…」
「駄目」
「何…が…」
「声、聞かせて」
「んぁっ」

 両手を拘束され今度は鎖骨に歯を当てられた。途端にびりっと感電したかのような刺激が襲い、そのあとをじわりと何かが染みだすようなざわめきが広がる。

「っは…く…んッ…」

 首周りや肩も同じように噛まれると、犬や猫の甘噛みを思い浮かべて何故だかおかしくなった。

―けど…動物の甘噛みはこんな風に力が抜けたりしないよな…

 ぼんやりとした思考でそんなことを考えているといつの間にか背中に回された手がファスナーを下ろしている。しようとしていることの意図を知り、沸いてきた羞恥に耐えるべく瞳を固く閉ざす。
 隙間から手を差し込むとしっとりと吸い付くような肌触りに頬が緩んだ。その手を前に回せばなだらかな線を描く胸元に辿り着いた。舌先で転がし軽く歯を立てればぷくりと尖って朱を深める。反対側は指先で弾いたりつまみ上げては転がしてやると身を捩って啼いた。

「っや…あ…」
「イヤ?すごく気持ち良さそうだけど」
「うる…さ…っい」

 頬を朱に染めていやいやするように頭を振る様は劣情を煽って仕方ない。今すぐにでも入れてしまいたくなる己の欲と戦いつつ、長いスカートの下、パニエを脱がせた。

「…お前…手慣れてないか?」
「んー…まぁ色々あったからね」
「…」
「そんな顔しないでよ。おかげで今こうしてルルーシュを抱けるんだから。」

 泣きそうな表情を浮かべるルルーシュの頬に口付けて慰めると、投げ出された素足を足首から徐々に撫で上げていく。自分より少し細く白い足が純白の布地の下から露になるのは見ているだけでも興奮した。内股を擦り腰まで露にさせると黒のビキニが現れる。

―しまった。こんなことならこっちも用意すれば良かったな。

 不謹慎なことを考えながらビキニの下で窮屈そうにしている膨らみに指を這わせた。声も上げずに仰け反ったのを見やりながら、ずらしたビキニから顔を出した肉棒を躊躇せず口の中へと迎え入れた。

「ひぁッ!」
「…綺麗な色…全然使ってないんだね」
「んっ…ふぁッ…あ…ぁ」

 少し小ぶりでピンク色に近いソレをしつこくなぶるように舐め上げればルルーシュの腰が淫らに揺れる。蜜をたらたらと溢れさせる先端に吸い付けばびくりと跳ねた。裏筋や付け根を丹念に舐めていると髪に指が絡んできて引き離すように力が籠もる。だが、躰を熱に浮かされた手では押さえつけるのが精一杯なようで、その震えからそろそろ限界であると悟った。

「ぁふ…くっ…す…ざくぅ…ッ」
「いいよ。我慢しないで?」
「あっ、や!やぁあッ!!」

 きつく吸い上げられると目の前が真っ白に染まる。全身が硬直して痙攣が起きた。乱れた呼吸で必死に喘いでいるとスザクが唇を寄せてくる。

「気持ち良かった?」
「分から…ない…」

 ついばむキスの合間に問われるが嵐のように過ぎ去ったそれがどうだったか、と言われても分からない。ただ、恍惚とした気分になるのでそれが気持ち良いということなんだろうか。そんなことに気をとられているとうつ伏せにさせられ腰を高く上げられた。

「ルルーシュ、ちょっとだけ我慢して」
「ッ?!ぁう!」

 ぬるり、と滑る感触に身を捩ると次いで甘い匂いが漂ってくる。ちゅぷ…と音がすると同時に襲ってきた痛みで顎を仰け反らせた。目の前がチカチカと明滅するような感覚に思わず枕にしがみつく。身を捩って少しでも和らげようとしたがスザクの腕がそれを許さなかった。

「か…っふ…」
「息止めないで」

 直接耳に言葉を吹き込み意識を反らさせた。躰を縮こまらせて震えるルルーシュを宥めようと頭を撫で、あちこちにキスを散らす。小さく上下する背中や握りしめて白くなっている手、涙を滲ませる目尻、赤く染まる頬…至るところに柔らかくキスを落として安心するようにと働きかけた。

「ゆっくり…呼吸して…大丈夫だから」

 指にはたっぷりジェルを絡ませてある。あとはルルーシュ次第。強ばる躰から力が抜けるようにと促してやると指先がすんなり入った。付け根まで埋まったところで挿入をやめる。

「んぁ…ぅん…」

 呼吸の度に秘華の違和感に苛まれているのだろう、息が乱れたままだ。

「感じる?ルルーシュ。中に俺の指が入ってるんだよ」
「…ッあ…」

 言葉にすると途端に意識してきゅうっと締め付けてくる。だがそれは一瞬で蕾が綻ぶようにふわりと解放された。理性と知識が邪魔してしまっているのだろう。躰はとても快感に素直だ。綻んだ秘華はすぐにひくひくと物足りないとばかりに蠢いている。ゆっくり傷付けないように指を抜き差しし始めた。

「んぁッ!」
「あ、今のところだった?」
「ゃんッ…ぁは…」

 指がスムーズに動き出した頃、不意に曲げられて躰がびくりと仰け反った。ある一点を擦られると背中が浮き、耐え難い疼きが下腹に沸き起こる。
 スザクの指がいつの間にか増やされその一点をしつこく攻められた。

「すごいね、ルルーシュ…もう三本も入ってる」
「言うッ…なぁ…!」

 何度も擦られる内に甘い疼きへと変化したその行為にルルーシュの腰が自然と突き出されていく。けれどそれはスザクの目前に秘華を曝け出し好きに弄らせる為で、ルルーシュにとっては羞恥を煽って仕方ない。更に、スザクの指が動く度にちゅぷちゅぷといった音を立てる。自らの下肢をスザクに暴かれていると意識すると途端に秘華が引き絞られた。

「ん…んッ…」
「どうしたの?もう物足りない?」

 情欲の色を滲ませた声にかぁっと顔が熱くなった。その顔を隠すように枕に埋めると中で蠢くスザクの指が生々しく鮮明に感じる。

「ひぁ…ッん」
「そんなに締めないで。今もっといいものあげるから」
「ッ…な…に?」
「すぐに気持ち良くなるよ」

 秘華はすっかり綻び指を抜いてしまっても何か求めるように開いたままだ。桃肉を押し広げると恥じているのかひくひくと震える。その痴態に喉を鳴らして取り出した自身をあてがうとぐっと腰を進めた。

「ぅああッ!」
「…ッく…」

 熱い肉塊が内に押し入ってくる感覚に肌があわ立つ。スザクが根気よく解したおかげか挿入はすんなりいった。半ばまで埋めたところでスザクが熱い息を洩らす。

「っは…すごい…気持ちいい…」
「…んぅ…うぅ」
「ルルーシュ…君の中…気持ち良くて狂いそうだ…」

 耳に吹き込まれた言葉に躰をわななかせるとスザクが息を詰めたのが分かる。

「そんなにねだらないでよ。めちゃくちゃにしちゃいそう…」

 吐息に交じった声が耳に吹き込まれ、更にぐっと押し込まれた。ぎちぎちに広げられた秘華はスザクの肉棒を食い千切りそうなほどに締め付けてくる。目眩にも似た快感にスザクは恍惚としたため息を溢した。
 視線を少し上げると震える肩と背中が見えた。シーツに散らばる髪に埋もれて赤く染まった耳が垣間見える。そっと撫でると過剰なほどにびくりと跳ねた。

「痛い?ルルーシュ」

 無理やり過ぎたかと思って尋ねると首が横に振られる。声が全くしないのを不審に思って顔を覗き込もうとしたが、ふいっと別の方向へ向けられた。反対側から同じことをするとまた別の方向へ向けられてしまう。

「ルルーシュ?」
「…」

 さっきまでは仰け反ったりしていた頭は今枕に深く伏せられている。そのままでは窒息してしまうのでは?と心配するほどに深く。

―何かあったのかな?

 肩に口付けて舌を這わせながらちらりと視線を上げるとルルーシュの行動に合点がいった。
 窓ガラスを覆うカーテンが半分ほど開いているのだ。外から中の様子は見えないにしても、ガラスに反射した自分の姿が見える。ということは…

「自分の厭らしい顔にびっくりしちゃった?」
「ッ!」

 途端にきゅうっと締め付けてくる秘華に思わず笑みが洩れる。感じ過ぎてとろけた表情を見てしまい、我に返ったのだろう。ともすれば、無意識に上がる甘ったるい声にも驚いたに違いない。そうして隠すべく今の状態になる。閉じこもってしまいたいのだろうが、繋がってしまっては不可能だ。

―ホントに可愛いんだから

 突然スザクの指が滑り足を鷲掴みにする。いきなり何だろうと驚いたルルーシュがそっと枕から顔を上げようとした瞬間だった。

「んぁあッ?!」

 掴んだ足をぐいっと引っ張られ無理やり横を向かされた。中をスザクの肉棒がぐるりと掻き回し意識が飛びかける。

「っな…なにッ…!?」
「もう一回、我慢ね?」
「ぅあぁ!」

 身構える隙もなく抉られて乱れた息を繰り返していると額にキスが降りてきた。ふと瞳を開けば躰が向かい合っている。慌てて腕で顔を隠そうとしたがスザクが動く方が早かった。

「ッ!!」
「だーめ。顔隠さないで」
「やッやめろ!馬鹿!」
「バカとはヒドイなぁ」
「馬鹿じゃないなら変態だ!」
「…そこまで言う?」
「本当のことだろ!」
「俺はただ…」

 わざとらしく言葉を切り、腰を揺らめかせれば圧迫感からか、快楽からか、嬌声が溢れた。恥ずかしさに顔を隠したいのにスザクに押さえられた腕はびくともしない。

「その表情と声が欲しいんだ」
「やっぱり…変態ッ…」
「いいよ、変態でも。厭らしいルルーシュが見れるならなんだって」
「あっ…やめッ」

 恍惚に彩られた顔をぐっと近づけられると躯がさらに開かれていく。足をいっぱいに広げられ奥へと割り込む熱の塊に息を呑むとスザクが律動を開始した。

「ひっ…あッ…んん!」

 ぎちぎちと食いつく内壁を慣らす為にも躯を緩く揺すってやると、それだけでルルーシュの背中が仰け反った。間近で喘ぐ表情に見入り、シーツに散らばる髪に指を絡める。

−髪が長いせいかな…本当に別人みたい…
「ッあ…ぅや…すざ…ぅ…ん!」

 ルルーシュの腕が縋りつくように挿し伸ばされ、背中へと回される。その手が爪を立て、全身が戦慄いているところを見るとどうやらそろそろ限界のようだ。スザクの欲を包む内壁の襞もきゅうきゅうと締め付けてきている。

「イきそう?…俺ももう…限界かな…ッ」
「ひ…っああぁぁあぁぁぁあ!!!」
「…っく…」

 びくりと背中を反り返しルルーシュが欲を開放したのが分かった。それに連動して内壁の締め付けが強くなり、スザクの欲も開放される。躯を震わせ高ぶったままの鼓動が落ち着くのを待った。荒い息を抑えながらそっと瞳を開くとルルーシュがぐったりとしている。どうやらイった後に意識を手放したらしい。

「そんなに気持ちよかった?…なんて聞いたら殴られるんだろうな」

 ちいさく笑いを漏らして己自身を抜き去る。その際にぴくりと跳ねた肩にキスを落とすとルルーシュの躯を抱きしめ夢の中へと誘われていった。


 次の日…
 スザクの宣言通り、着せ替え人形よろしくルルーシュはあれやこれやと散々着替えさせられ夕方になる頃にはぐったりとしていた。
 そして誓うのだ。

「二度と自分自身をプレゼントになんかしないッ!」



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