どうするつもりなのだろう…と半ば興味津津で次の指示を待っていると、気だるげに動く躯は背を向けると椅子に両手を付いて腰を高く上げて見せた。綺麗なAラインを描く足の隙間から重力に引き寄せられる胸と頬を赤らめたままの刹那の顔が覗き見える。

「…おいで?」

ぽつりと囁かれた甘く優しい声はまるで麻薬のように脳の動きを鈍らせた。一瞬固まってしまった四肢は本能の命じるままにふらりと動き、蜜を滴らせる花弁に喉が鳴る。まるで催眠に掛けられたかのように近づくと紅く熟れた花弁に口づけた。

「やっ、ちがぅ!」

ぴくりと桃尻を跳ねさせると口から花弁を逃がされてしまった。どうやら辿り着く先を間違えたらしい。『リード』を引き寄せられて顔に近づく。

「口は…こっち…」

また引かれるままに上体を曲げれば蜜を付けた口の周りを舐めて重ね合わされる。隙間から潜り込んできた舌に己のそれを沿わせるとそっと離されてしまった。

「ご褒美だと…言っただろう?」
「ぅん?」

自然と密着している太股を揺すると、押し付けられていたニールの雄が肌の上を転がる。近くに寄せた顔が悦楽に歪む様を見て、腰を擦りつけた。

「ニール…ご褒美…だ。」

念を押すように言葉を重ねられ、滑らかな肌に刺激される息子と足の付け根に押し付けられる腰に結論を手繰り寄せて行った。少し離れて、くの字に曲げられた刹那の躯にぴったりと沿わせると、正解だったらしい。肩越しに頭を撫でてもらった。

「ぁ…さっきより…おっきぃ…」

足の間に差し入れた手で探り当てたニールの雄はさっきまで以上にガチガチに固く、さきほどまで以上に汁に塗れてどろどろだった。『コレ』に突き上げられる…その考えが頭の隅を過った瞬間、蜜壺の奥がじゅん…と濡れていく。手で触れるだけではもう物足りなくなったのだろう、腰が僅かに揺れて手に持った雄がぬるぬると滑っていた。

「っぅ…あっ…」
「まだ…よし、とは…言っていない。」
「くっ…ん…」

ニールが触られることでいかに悦んでいるのか、理解は出来ている。手を縛られているのだから当たり前の反応だ。けれど、もっと…ぎりぎりまで焦らしてみたい…という欲望が刹那を支配していた。いつだってニールが主導権を握り泣くまで焦らされることだってあったのだから、一度くらいいいだろう?とも思う。
そういった理由から、手を使って一人勝手に自慰するのは反則なのだ。躾ける為には少々手荒な事も必要か…と手のひらで蠢く雄を握りしめる。途端に跳ねる躯と詰まる声…叱る事に成功したようだ。その証拠にくったりと凭れかかり、背に頬を擦りつけてきている。

「まて…が、出来るなら…ちゃんと待っていろ。」
「…んっ…」

頭を撫でる代わりに虐めた雄を手でそっと撫でてやる。そうすれば苦しげだった呼吸が僅かに和らいだ。もうそろそろ痛みも引いただろうか…と様子を伺っていると、手に包み込んだ雄がとくとくと脈打ち、唇から浅く、熱く息を吐き出し始める。早く…と強請るように背中へ額を押し付けてくるようになった。

「っ…いい、子…」

持った雄をぬかるんだ花弁に押し当てる。蜜口に亀頭が浅く沈むと背中で呼吸が荒く吐き出された。肌を焼く吐息に交じり、密着する躯が震えて余裕なく急かしてくる。求められる悦びと淋しかった心に応えてくれる温もりに、満たされていった。大きく緩やかに息を吐き出すと腰を浮かして亀頭を花弁の中に押し込んだ。

「っぁあ…!」
「…くふっ…」

泣いているような震えた声と共に襲う甘い悦楽が躯の中心から水紋のように四肢へと広がっていく。ぶるりと震えると柔らかく温かな口が亀頭をぬぷりと咥えこんでくれた。今にも暴れ回りたい腰をどうにか抑えつけて刹那が慣れるのを待ち続ける。ぎりっと理性の紐に似た縄の擦れる音が小さく聞こえてきた。

「ぁ…ん…」
「っは…っはぁ…」

予想以上に育った楔の大きさに躯が啼き意識を掠れさせていく。背中で荒々しく繰り返される呼吸に、ニールが突き動かしたい衝動を耐えているのだと思うと感覚のなくなった四肢に力が戻ってきた。

「まて…たんだ、な…」
「んッ…ぅ…」

指先で竿をなぞって褒めると理性が本能を抑えつけようと必死なのか、頭を強く押し付けてくる。

「ふっ…はぁ…ッ!」
「もう…いいぞ?ニール…突き、上げて…」

そっと囁くような声で『よし』の合図が告げられた。視界の霞む中に滑らかな曲線を描く背骨と丸い肩が浮かび上がってくる。その少し上に首を捻って振り返る刹那の横顔が見えた。

「っく!」
「あッあぁあ!!」

腰を突きだせば蜜口で留まっていた楔が最奥目がけて突き進む。びくりと跳ねる背中を見下ろし、震える肩に唇を寄せた。

「ぁ…ぁ…ふ、かぃ…ッ」

全身が胎内に入り込んだ楔の熱さと存在感に戦慄き、椅子に着いた手がかたかたと震えている。いまにも崩れ落ちそうになるが、どうにか耐えた。

「はっ…はっ…」

耳のすぐ後ろで聞こえる荒々しい呼吸…ここまで乱れたニールを見るのは初めてかもしれない。いつもの余裕がどこにも見えず、自分が施した攻め苦に翻弄されている。初めて逢うニールの一面に胸がどきどきと高鳴り、心の中が溢れるほどの温もりで満たされた。

「にぃ…るぅ…」

甘い声音に呼ばれて閉じた瞳をゆるりと開く。蜜をたっぷりと含ませた壺の中は柔らかな粘膜が絶えずうねり剛直に育った楔を包み込んできた。喩え様のない悦楽を与えられる楔に埋め込んだだけで達してしまいそうな中、唇を噛み締めてどうにか耐え忍ぶ。

熱に浮かされた視界の中、頬を紅潮させた刹那の横顔を捕らえると蜜壺が引き締められた。

「っ…!」
「うごい…て…」

早く…と急かすように蠢く内壁に包まれ、息を呑んだ。ぞくぞくと震える背筋を感じながら腰を揺さぶると、甘い啼き声がぽつりぽつりと零れる。

「あっ…あぁ…」

鼓膜を甘く響かせる声が心地よく、もっと上げさせようと密着した腰をゆらゆらと動かした。途端に溢れる声に笑みが漏れる。

「んっ…ぁんっ…!」

最奥までみっちりと詰め込まれた楔が押し上げてくる感覚に甘い疼きが四肢を駆け巡る。いつものように叩きつけるのではなく、ゆるゆると揺れるように動かされているだけなのに、躯を襲う快感はとてつもなく強かった。けれど、波のように次々と疼くが物足りない、ともどかしさに腰が揺れる。

「ぁんっ!に、るぅっ!」

緩やかな攻め方に物足りなさで疼き始めたのだろう、刹那の腰が動きに合せてゆらゆらと揺れ始める。もっと強く、深く…突き上げて欲しいと強請る躯に反してニールはゆったりとした動作を変えない。限界近くまで『まて』をさせられたが、今もう蜜壺に詰め込んだ楔の心地良さに少し焦らすだけの余裕が出てきたのだ。

「に、るっ!あっやん!」
「…はぁっ…はっ…」
「こた、えてぇっ!」

首に縄をかけた辺りからニールがまったくしゃべっていない事に不安が募ってくる。今繋がっている相手がニールで間違いないはずなのに、可笑しな錯覚が起り彼以外の人間に襲われている感覚に囚われ始めた。

「や!にぃるぅ!」

啼き声が泣き声の色を混じらせ始めた頃、ようやく緩やかな攻め立てが止まった。がくがくと震える躯を必死に支えながら荒々しい呼吸を少しでも宥める。

「に…っるぅ…」
「どうした?刹那?」
「こえっ…きかせ、てぇ…」

ちょっとした意地悪のつもりだったが、効果が強すぎたらしい。『女王様』の機嫌を損ねてしまった。小さく苦笑を洩らして耳元に唇を寄せる。

「でもさ…犬はしゃべらないだろ?」
「やっ!」
「嫌なの?」
「いつも…みたいにっ…なぶって…」

ふるふると力なく振られる頭と零れ落ちた言葉に一瞬きょとりとしてしまう。どうやらこの『女王様』は基本的にM気質らしい。

「…知らなかったな…」
「ん…ぅ…?」
「刹那は…言葉攻めされるの…好きなんだ?」
「やっ…ちがっ…」
「どうして?…嬲ってほしいんだろ?」
「にぃるっの…」
「…ぅん…?」
「にぃるの…こえ…す、き…」

そっと呟かれた言葉が一気に体温を上昇させ、頭の血管がブチ切れそうになった。今すぐ壊れるほど強く楔で抉り欲望をぶちまけたい衝動に駆られるが、根元を戒める紐が痛みとともに理性を繋いでくれる。しかし体内で燻る熱は一向に引かず、現状を打破するには己の雄でこの『女王様』を陥落させねばならない。

「…この声…すき?」
「ん…すき…」
「じゃあ…酷いこと…言われてもいいんだ?」
「…ひどい?」
「ん…たとえば…」

ずっと止まったままだった腰をゆるりと動かすとそれだけでピクリと躯を跳ねさせる。その躯を見下ろしながら上体を起こすとぺろりと乾いた唇を舐めた。

「こう…やっ…て!」
「んっ!あぁ!!」

大きくグラインドさせるとびくっと背を反らせて跳ねる黒髪を見つめながら、腰を引くと絡みつく内壁を振り切りながら楔がずるりと抜け出てくる。引き締まる蜜口に亀頭が引っ掛かる所で動きを止め、数拍置いてから再び突きこんだ。

「あッ!あぁぁああぁ!!」

びくびくっと震える躯を持て余しながら椅子に額を押し当てる刹那の足が、がくがくと震えて今にも崩れ落ちそうだった。下腹をぴったりと桃尻に押し当て楔を最奥まで咥えさせるとまたじっとする。さきほど襲った快楽の嵐が収まりつつあるのか、きゅうきゅうと締めつける蜜壺が僅かに緩むとまた腰を引いた。

「あっあっ!!」
「ほらっ…そん、なにっ…啼いてっ…!」
「あぁッ!あぅっ!」
「イヌ、にっ…犯されっ、てっ…ヨがってっ…!」
「やっ!やぁん!」
「このっ…変態ッ…!」
「あぁっんッ!!」

言葉が切れる度にぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てつつ蜜壺を掻きまわされる。がちがちに張り詰めた楔が最奥を突き上げる度に目の前が真っ白になるほどの悦楽が脳髄へと突き刺さった。

「…とか…?」
「あっ…あっ…ぁ…」

ふと突き上げが止まると背に躯を寄り添わせて耳元で囁かれる。急激に襲ってきた悦楽の嵐が四肢を痺れさせたままに、ナカへ埋め込まれた楔が熱さを増したのだろうか…存在感を強く示し腰がぐずぐずに溶けてしまいそうだった。朦朧と霧がかかったような意識の中、小さな笑い声が聞こえる。

「そんなに…ヨかったんだ?」
「な…に…?」
「下のお口…ちゅぱちゅぱって吸い付いてきてるけど?」
「なっ…?!」

指摘された内容に顔がかぁっと熱くなった。無意識であるにはあるのだが、自分の躯がそれほど悦んでいるとは思わなかったのだ。欲した衝撃に気持ちいいとは思ったが…彼に笑われるほど顕著な反応をしている事に恥ずかしくなる。

「あ〜あ…蜜もだらだら零して…」
「う…」
「…いやらしいご主人様…」
「…ぁ…ぁ…」
「あぁ、違うな?」
「ん…ぅ…?」

ますます熱くなる顔を助長させるようにニールの唇が耳元へ寄せられる。吹きかかる呼吸にふるりと躯を震わせて何を言われるのか、と構えた。

「…淫乱刹那様…」


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