全員集合の後、移動した先はグラウンドだった。車だとしたら道に出るはずなのに…と不思議に思いつつもついていけば…轟音とともに現れたのはジェット機だった。
 他のメンバーいわく…

 このジェット機で移動をするらしい。

 ちなみにこのジェット機も学園の所有物らしく…各地に転々とある施設への送迎を行う為のものらしい。学園に来て半年足らず…前以てとんでもない規模の学園だとは聞いていたのだが…そのとんでもなさは計り知れないな…とセイエイ姉妹は唖然としていた。

 快適な空の旅…ほんの一時間ほどではあるが、揺れもほとんどなく体感するよりもうんと早い速度で進んでいるらしいジェット機は青い海の上に浮かぶ諸島の一つに降り立った。滑走路が突き出したこじんまりとした島だ。

「いい天気だねぇ〜!」

 爽やかな風の吹き抜ける中、ジェット機から降り立てばすぐ目の前に白い砂浜が広がる。きょろり、と見回すと林の中にいくつかコテージが建てられていた。どうやらこれが本日からの宿泊施設のようだ。さらに見回していると、海を隔てた場所に幾つか島が存在している。

「すぐ隣の島にはショッピングセンターとかあるからな」
「野菜の買出しはそちらの島へ向かうことになる」
「…へぇ…」
「引き潮になったら歩いていけるんだよ」
「それから…あっち側の島。あれも学園の施設がある島なんだ」
「…まだ他にもあるのか?」
「いんや、この辺にはこの二つの島だけ」
「この辺…という事は他の地域に行けばまだまだあるということか」
「そゆこと。」
「ちなみにMr.ブシドーが来ているらしい」
「「「「はぁ!?」」」」
「「ブシドー?」」
「ほら…顧問的な…」
「「…あぁ…」」
「あぁ、そうだ。アレでも我々生徒会の顧問だからな。引率という名の便乗をしてきたようだ」
「…マジかよ…」
「まぁ…あの島には滝もあるし…修行ついでにひょっこり顔を出しにくる程度なんじゃない?」
「引き潮の時を狙ってくるとしたら帰るのも同じタイミングだしね」
「いいや…あいつのことだから修行の一環としてこの荒波の中を泳いでくると思うね。」
「…あぁ…否定が全く出来ませんね」

 がっくりと肩を落とす面々…ぼんやりと眺めている島はただの島なのだが…今にも例のあの人の声が響いてきそうだ。

「さ、とっとと荷物を運びこもうぜ!」
「そうですね…ミハエルもベッドに放り込みたいですし…」
「あ〜あ〜…初日から…」

 ちらりと動かしたヨハンの視線の先では荷物の間に蹲り、真っ青な顔のミハエルがいる。寝不足の上にジェット機の僅かな揺れで酔ったらしい。あまりのぐったりとした雰囲気に思わず同情してしまいそうだった。

「では、部屋の鍵を渡す」

 ティエリアが手荷物から取り出したのはイマドキ珍しいくらいのアンティークな鍵だった。番号が書かれた羊の形の木のプレートに付いた鍵を手渡していく。

「コテージは全部で5棟。この内寝室が3棟で2人部屋が2つずつ。中央に位置する大きな棟は食堂やキッチン、リビングといった多目的スペース。残りの一棟はランドリーと浴室だ。どちらも共同スペースなので節度を持って利用するように。」

 詰まる事なくすらすらと施設の説明を加えつつ注意を添えるティエリアは『誰かさん』よりもよっぽど引率の先生っぽい…

「昼食の前に少し体を動かすから皆、着替えたら裏側にある海岸に集合」
「「「「「「「「了解。」」」」」」」」

 一名を除きぴたりと揃う返事を聞きながらセイエイ姉妹はきょとん、としていた。各々、荷物を持って移動を始める中、どうしていいのか分からない。何よりも、二人の内どちらにも鍵を渡されていないのだ。

「ほら、行くぞ?」
「…どの部屋に行けばいいんだ?」
「どの部屋って…」
「俺たちは鍵を渡されていない」
「そりゃそうだろ。」
「「?」」
「俺らと同じ部屋だもん」
「「・・・」」

 ほら、言って見せられたのはさっき配っていた鍵…ニール、ライルともに一つずつ持っている。それをしばらく見つめてから移動を始めた面々を振り返った。
 ヨハンに一つ…ミハエルを支えながら歩いているからこの二人で一室。
 アレルヤに一つ…ハレルヤと並んで話している雰囲気から姉妹で一室のようだ。
 クリスに一つ…こちらはフェルトと談笑しながら歩いている…つまりガールズ2人で一室。
 最後の一つ…ティエリアが持ったまま…ネーナが鼻歌交じりでついていっているので書記組で一室。

「兄弟、姉妹で分けたのではないのか?」
「まぁ、基本はその配分なんだけどな」
「俺らは特別〜…ってね」
「…職権乱用?」
「「…は、してない。」」
「「・・・」」
「教官殿の粋な計らいだよ」
「多少は目、瞑るから少しくらい羽目を外していいってさ」

 荷物を持ち直した二人が刹那と那由多それぞれのカートを持っていってしまう。それを慌てて追いかけるとにっこりとした笑みを浮かべて振り返ってきた。

「俺らと一緒は嫌?」
「いや…その…」
「嫌…というわけでは…」
「じゃ、なんも問題ないっしょ」
「そう…だが…」
「ま、何かあったら逃げてきたらいいし。な、刹那」
「え?」
「おい、こら。逃げるような事は刹那限定かよ」
「そりゃもちろん。なぁ?那由多」
「え?」
「那由多、ライルのイビキがうるさいとか眠りにくいとかだったらいつでもこっち来ていいからな?」
「あ?…あぁ…」
「刹那、姉さんがしつこかったら夜中でもこっちに来て大丈夫だからな?」
「う…ん…」

 そんな言い合いを左右に聞きながらセイエイ姉妹は大人しく付いていくのだった。

 * * * * *

「…やはりこうなったか…」

 海岸に集合…という事で…持ち物リストにも書いてあった水着の出番だという事が容易く予想が付いた。そんなわけで早速着替えて件の海岸に来たのだが…
 セイエイ姉妹と一緒に来たディランディ姉妹がどこかがっくりとした様子になっている。
 なぜか…と問う事は愚問だろう…

「思った通りの格好だな…セイエイ姉妹」
「ホ〜ント…予想を裏切らないよねぇ…」
「まったく…ディランディ姉妹が傍にいながら…どういう事ですか?」
「いや…だって…」
「土日返上して部活の方に行ってたし…」
「あ〜…そっかぁ…ショッピングに行く暇もなかったか…」
「「…はい…」」

 話の主題…というのは…何がまずかったのだろうか?と首を捻るセイエイ姉妹の水着の事だ。皆一様に私物の水着を着用している中…二人は学園指定のスクール水着を着ている。胸元のネームにもしっかり名前が書き込まれた…紺色の水着…これもこれで可愛らしいのだが…ディランディ姉妹を始め…ネーナもクリスも可愛い水着を期待していただけに…かなりしょげ気味になった。

「ならばコレは無駄にならなかったな…」
「え?もしかして…」
「それって…」
「セイエイ姉妹の分だ。」
「やーん!さっすがティエリア様ぁ!」
「…何故ネーナがテンションアップする…?」

 砂浜に立てられたビーチパラソルの下に置いてある荷物の中から二つ紙袋を取り出すと、刹那と那由多それぞれに押し付けた。

「早く着替えて来い」
「何故だ?訓練だというならこの水着でも充分だと思うが…」
「それはそうなんだけどぉ…」
「ここは学園外だ。一般の場所でネーム入りのスクール水着ではまるで自衛隊の訓練のように見えてしまうだろう?」
「…自衛…隊…」
「我々は自衛隊ではなく、一夏休み中の学生だ。傍目から見てそれらしい格好をするのが道理。よってこのスクール水着は却下だ」
「…なるほど…」
「分かったら着替えて来たまえ」
「「了解」」

 あっさり説得し終えると、二人は再びコテージへと戻っていった。その後姿を見送りながら感嘆のため息が漏れる。

「いやぁ…鮮やか…」
「適切かつ的確よねぇ…」
「将来はネゴシエーターかしら?」
「いや…こんな高圧的なネゴシエーターじゃ犯人の説得にゃ向かないだろ…」
「あぁ…神経逆撫でしちゃうわね…」
「そこ。」
「あ、すんません…」
「ちょっとしたお茶目会話で…」
「私はネゴシエーターよりも刑部の方がいい」
「………」
「………」
「……さ…さよっすか…」

 思わぬ希望職を聞いてしまって唖然としてしまった。

 しばらくして…再び海岸へと出てきたセイエイ姉妹の水着にディランディ姉妹のテンションが一気に上がっていた。

「かぅわい〜い!」
「さっすが教官殿直々の選出だな」

 ティエリアから渡されたのは青から水色と紺から水色へのグラデーションで染められたホルターネックビキニに、同じグラデーションのTシャツとグレーのハーフパンツがついた、4点セットのもの。海に入る可能性を考えてか、Tシャツとハーフパンツは脱いで来たのだが…おかげで眩しいビキニ姿をお披露目していた。
 ようやく期待する物が拝めた、とばかりにニールは刹那に抱きつき…ライルはというと少し離れた位置からじっくり眺めて観賞している。

「へぇ〜…刹那も那由多も…結構胸あるんだねぇ」
「そうか?」
「クリスほどではないと思うが…」
「ん、でもフェルト並みにはあるよね」
「ん〜…でもぉ…刹那、胸のサイズ大きくなったよね?」
「え?」

 ずっと黙ってただ見つめるだけだったネーナがぽつりと呟いた。あまりにも唐突な内容に抱きついたままのニールも、思わず頭を撫でているライルをも含め、一同がしん、と静まり返る。

「…突然…何?」
「え?…だって…ほら…刹那と那由多って体のサイズが何もかも一緒だったじゃない?
 でも…ビキニで並ぶと…刹那の方が谷間がくっきりしてる」

 ネーナの見解に皆の視線が思わず刹那の胸元へと集中する。刹那自身も首を傾げつつ自らの胸に両手をあてていた。

「そう…か?」
「ちょっとお肉が付いてきたとか?」
「最近食べる量増やさせたもんな」
「けれど、摂取量は那由多も同じだ」
「それで刹那だけ、というのは可笑しい」
「あ…そっか…」
「んじゃあ…一緒に食ってる夕飯が原因じゃないのか…」
「刹那と那由多ってロックオンズと一緒に食べてるの?」
「夕食だけな」
「毎日じゃないけど…週一はしてるかな?」
「でも刹那だけだっていうんだったらそれが原因じゃないんだよね?」
「…原因は何か分かるがな」
「え?分かるの?」

 首を傾げる一同の中、今度は一人涼しげな表情をするティエリアに視線が集中する。

「ロックオンのせい、という点では間違いではありませんけどね」
「姉さんだけ?」
「何かしたっけ??」
「何時しているのかは知りませんが…マッサージしてるのでしょう?」
「マッサージ?」
「えぇ、胸、と言わず、体中揉み解しているのでしょう?」
「………あ〜………」
「「「・・・・・」」」
「どういうことだ?刹那」
「さぁ?何のことだ?ロックオン」

 何を言っているのか、理解出来ないセイエイ姉妹をよそに理解してしまった回りのメンバーは一様に口を閉ざすのだった。


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