「……んーぅ……」
「ほら、これで声も聞き放題。」
「っ……!」

 ニールの意図が分かると同時に頬がかっと熱くなる。縛り上げられた躯を弄られるといつも以上に声が抑えられないし、酷く身悶えるほどに感じ入ってしまう。そんな状態で唇を噛み締められないとなると間違いなく、耳をふさぎたくなるほどに甘ったるい声で喘ぐ自分の声が聞こえるだろう。

「さぁ……たっぷり啼いてもらおうか?刹那」
「……っは……ふ……」

 細められる碧の瞳が獣を宿した。ぞくりと震える躯をぐっと耐えて首に下りてきた唇を受け入れる。
 つぅっ……と滑る舌先が縄と肌の隙間を縫い、ゆるりと下りていく。ずっと疼いたままの胸にも軽く唇を寄せ、更に伝い下りていった。

「んっ……ふっ……ふぅっ……」

 荒く吐き出される呼気すら隠せずに、丸いボールの中から零れ落ちていく。いつもならば肌を擽る柔らかな髪に指を差し入れることが出来るのだが、縛り上げられた腕では叶わない。
 もどかしさの降り積もる中、ロープの食い込む肌を堪能していく唇が時折強く食むように擽ってくるから余計に疼いてしまう。

「んふっ……っは……ふ……」

 いつもよりもうんと荒い呼吸を繰り返す刹那の声を聞きながらニールは薄く笑みを浮かべていた。唇の動きに気を取られているのだろう、ロープを咥える華が惜しげもなく晒されているのに全く抵抗をしてこない。密口の端からとろとろとあふれ出す蜜がシーツにまで伝い、シミを作り出していた。

「ッふあ!!」

 ヘソの回りを擽りそろりと伸ばした指で股上へと差し迫る。ふるふるっと震える肌を堪能しながら滑り込ませた指は花弁に食い込む結び目を引っ掻いた。すると途端に跳ねる躯と吐き出される嬌声に益々笑みが深まる。

「んっふぅ!……んっんんっ!!」

 かり……かり……と引っ掻く度に蠢くロープが刹那の媚体を苛む。しっとりと濡れた結び目は引っ掻くたびに花弁を擦りながら滑り、まるで蜜口を指で擦り付けているようだ。

「んっは!っはうぅ!」

 まともな言葉を紡げない刹那が首を振り何かを訴える。恐らくはやめろ、と叫びたいのだろう。けれど目の前の秘裂から留まる事を知らない大量の蜜が溢れ返っている様をみると、手を止める事は出来そうにない。それどころか、もっと嬲ろう、と結び目を押し上げた。

「ッふぅあぁぁぁ!!!」

 途端に跳ねる四肢……びくっ……びくっ……と背をそらす度にロープの擦れる音が奏でられる。とぷっとさらに溢れてきた蜜からしてどうやらイってしまったらしい。

「もうイったのか?刹那」
「はっふ……っふ……ぅんん……」

 伸び上がって貌を覗き見れば涙が頬を濡らしている。随分感じ入っていたようだ。短時間に目いっぱい詰め込まれる快感は一種の毒のようなものだな、とニールは小さく笑う。

「あっ……ふっ!」

 滑るロープに苦戦しながらも横へ押しやると真っ赤に充血した花弁の全貌が晒された。ロープの赤よりも更に卑猥な…紅…ぬらぬらと光る媚肉の隙間に指を滑らせると面白いくらいに大きく躯を跳ねさせる。

「っんんぁぁあああッ!!」

 蜜でどろどろに解けた口の中へ指を突き立てるとロープを軋ませて躯が仰け反った。苦しげに喘ぐ唇を、含ませたボールごと口付ける。唇のみが重なり合う口付けは、舌が絡ませられなくて酷くもどかしい。そのもどかしさを他で発散させようというのか、突き立てた指がきゅうきゅうとキツク絡めとられる。

「……はっ……指……持ってかれそうだな…」
「あふっ……んっ……ぅ……!」

 唇を開放すると泣いているかのような瞳が向けられる。その貌を見下ろし口角を上げると、埋めた指を動かし始めた。

「んっうぁ!」

 すぐに上がる嬌声。悲鳴にも近い響きを持った声は、刹那が感じすぎて苦しいと訴える時の響きと似ている。食い込むほどに締め上げてくる内壁の通り、快感に溺れきっているのだろう。その証拠にガクガクと震える躯と、大きく揺らされる腰の動きがイっている時と同じような激しさを持っている。
 いや、恐らくはイき続けているかもしれない。

「気持ちいいのか?刹那」
「あ、あぅ……っふぅ……うんん……ッ!」

 シーツを蹴る指先がきゅっと丸められている。宥めるように撫で擦ると余計に躯を跳ねあげた。指一本しか入っていないというのに、指を抜き出せば背を仰け反らせ、奥へと潜り込めば身を丸めて身悶える。

「ふぁっふ……ふっんん……んっ……!」

 たった一本でこの乱れよう。もし指を増やしたら……もっと太い……己の欲望を咥えさせたら……
 考えただけで息が乱れ、腰が疼く。
 今すぐ突き立てたい衝動ともっと身悶える様を眺めたい欲が鬩ぎ合う。一つ熱い呼気を零してカサカサになった唇を舐めた。

「ひゃうっ!」
「……2本目……」

 先に入れてあった指に沿わせるよう、もう一本差し入れる。がくがくと震える内腿が腕を挟もうとするが、間に捩じり込ませた体が阻んでしまっていた。代わりに縋りつく足が脇腹を擦り上げる。

「ふぁふっ……んぁっ……はぁっうぅっ!」

 単調な抜き差しを繰り返し、気まぐれに指を折り曲げるとびくんっと背を仰け反らせている。もうイっているのか、身悶えているのかの境も分からないほどに溶けた貌を見上げた。ボールを噛ませた唇の端から、呑み込めない唾液が伝い落ちている。みだらに濡れ光る唇に指を滑らせるとゆるりと瞳が開かれた。

「……なぁに?」
「ぁふっ……っふぅ、うぅ……」

 訴えかける瞳ににっこり微笑みを浮かべて分からないふりをする。けれど体に擦り寄せられる内腿が嬲る己を叱責しているようだ。ますます強く押し当ててくる。

「んふッ!ひぁふっ!」

 ……じゅぷ……じゅぷ……とますます濡れた音を立てて指が抜き差しされる。指に絡み付く粘着質な蜜が動きを助長させ、付け根まであっさりと呑み込ませていた。奥まで呑み込ませてぐるぐると手首を回すと、華芽の裏辺りに存在するシコリを引っ掻くことになる。指触りの良いその部分をしつこく攻め立てると、一層激しく身を捩りだす。

「ひっぁふっふッはぅッんっふぁ!」

 自ら腰を突き出すように背を仰け反らせてボールの中からくぐもった嬌声を零し続ける。間近に見える貌は淫らに紅く染まり、瞳も虚ろになりつつあった。

「んぁっふッ!!」

 ずるり……と抜いた指にもう一本追加して突き立てる。ブリッジをしているような体勢になるまで背を仰け反らせて躯を激しく揺すりだした。また絶頂の大きな波にさらわれそうなのだろう、ロープの隙間から見える腰骨が浮き沈みを繰り返し、なだらかな弧を描く腹の先で胸がたわわに揺れ踊る。
 躯を押さえ付けるように重ねると、酷く疼くのか胸を擦りつけてきた。ロープまでも擦りつけられて、服越しにごりごりと当て擦られている。こちらまで可笑しな気分になりそうだった。

「ひぃっ……ふっ!」
「うん?」
「ふぉっふっ……ふっぉうぅっ!」

 ボールに邪魔されまともな言葉になっていない声に耳を傾ける。ぽろぽろと流れ落ちる涙からも何も望んでいるのか、薄々分かってしまった。

「もう?」
「ひ、へ……へぇ……」
「入れて……って?」
「んっ……ん……」

 正確に聞き取ってやればコクコクと必死に頷いて見せる。全身で肯定するように反らした背で腰も押し当ててくる様子から本当に限界なのだと分かった。
 苦しくて切なくて……欲しくってたまらない……
 狂おしい程に求めるその瞳に熱い吐息を零して頬に口づけた。

「入れてもいいけど……」
「っ……ん……」
「善過ぎて気絶すんなよ?」
「ふっ……ぅう……」

 ずるり……と指を抜き出せば、指先からぽたりと蜜が滴り落ちる。擦り寄せられた腰に腕を回して更に密着させると、パンツの中から取り出した己の欲望をあてがった。

「はぅ……んん……」
「そんな貌して……欲しかったんだ?」
「ん……」
「素直でいい子だな……たっぷり善がらせてやるからな?」
「っは……ぁ……」

 瞳を細めてうっとりとした貌をする刹那にニールも限界だった。すぐに突き立て、ぐちゃぐちゃに啼き狂うほど犯してやりたい本能でいっぱいいっぱいだ。
 足を抱えあげるには片方拘束してしまっているのでやりにくい。手っ取り早く解いて腰を掴み上げると、蕩けた紅い瞳が期待に満ちた視線を向けてきた。……ニッ……と笑みを深くすると、一気に腰を密着させる。

「ッんふぁあああ!!」
「っく……ぅ……」

 ずぷんっ……と容易く呑み込まれた楔は、熱い粘膜とどろどろに溶けた蜜に塗れて奥へ奥へと誘われる。すぐにでもイかされそうなくらいに気持ちのいい蜜壷は容赦なく悦楽を与えてきて、欲望をよこせ、と牙を剥く。

「ぉまえっ……感じ、過ぎだろっ……」
「ぁふ……っ……んっぅ……」

 絡み付く内壁にくらくらと眩暈が引き起こされる。腰を動かそうにも、巻き付けられた足がもっと奥深くまで穿てと強請っていた。

「……せつ、な……これじゃ……動けないんだけど……」
「……んん……」

 がっちりとクロスされている足をするりと撫でて、後悔してしまった。楔を包み込む内壁が複雑にうねって余計に我慢出来ない。ひくん……と躯を揺らして首を振るう様がいじらしいのに、楔を咥えこんだ蜜壷はどこまでも厭らしい。
 一向に緩む気配のない足を無理矢理引き離して大きく割り開くと勢い付けて腰を振るった。

「んッふあぁ!」
「動けない……つってんでしょが……」

 お仕置き、とばかりに最初から激しく突き上げると、肉を打ち付ける音に混じって卑猥な水音が掻き鳴らされる。叩きつける度に跳ねる躯を見下ろして荒く呼気を吐きだすと、腰の動きを弛めた。

「ッ……はぁ……」
「ぁふっ……ッんん……」

 緩やかな抜き差しをしていると、動きに合わせて蜜壷が締め上げ、緩和して……と動き始める。それは自分が教えた動きではあるが、同時にこちらを煽って互いに絶頂へと登り詰めるヤり方でもあった。
 蜜壷からゆるりと抜き出せば嫌がるように蜜口がすぼまり、逆に最奥を目指して突き進めば内壁がやわやわと蠢いて奥の奥へと招き入れた。
 腰を捩る度に緩み、絞まりと加減を変えているロープのように、刹那の躯がニールを縛り上げている。

「ふぁッ……はぅッ……!」

 奥まで突き上げてから腰を揺すると、先端が押し付けられた子宮口が擦られるのか四肢が一層激しく身悶える。きゅうきゅうと蜜壷が引き締まる動きに熱い息を漏らし、絡み付く肉の感触を存分に愉しむ。

「……せつなぁ……もうそろそろ……出そう……かな……」

 焦らすように……ぬくぬく……と小刻みに揺らしていると、じれったいのだろう、刹那の腰が勝手に揺られていく。淫らに揺れる腰の動きにニールは瞳を眇めて掠れた声で呟けば、涙にぬれた瞳がゆるりと上げられた。
 紅い瞳に映る情欲の色…捕食者に食べられる獲物の貌にしては悦びに満ちている…

「あ……ぁ……う……」
「ほしぃ?」
「……んぅ……」
「どこに欲しい?腹の上?」
「うっ……んんっ……!」

 場所を確認するように……さわっ……と曖昧に腹を擦ると、ふるるっと首が横に振られる。その答えに……にっ……と笑みを浮かべると更に手を上り詰めさせる。

「じゃあ、胸?」
「んむぅっ!」

 躯を捩るたびにふるふると震える胸を掴まずに実が擦れる位置をキープする。すると、悦楽にぴくぴくと震える胸が自ずと実を擦りつけ曖昧な刺激に身を捩り続けた。もどかしくてたまらないのだろう、背を反らせて手の平に押し付けようとすらしてくる。

「ひぃっ……ふぅっ!」
「……ふふ……分かったよ……奥にたっぷり……な?」
「っは……っふ……」

 焦らしすぎた躯が辛いのだろう、刹那が涙をぽろぽろ溢しながら叫び声を上げた。ボールでくぐもっているとはいえ、本当の泣き声はすぐに気付ける。慰めるように頬を撫でると瞳を細めて自分から摺り寄せてきた。

「……ふっ……んん?」
「コレ、取ろうか……」
「ん………いぃ……のか?」

 するり……と外されるボールに刹那は不安そうな顔で見つめ返してきた。その表情に小さく笑みを浮かべて頬へ唇を掠める。

「あぁ。口を塞がれて身悶える刹那も美味しいけど……必死に名前呼ばれる方がいいな、って思ってな」

 その言葉にしばし考え込んだ刹那の頬がじわじわと赤みを増してくる。ついでに瞳も潤んできて可愛いったらない。
 ボールのなくなった唇に口付けてさきほどまでは味わうことの出来なかった舌を絡めとる。強く吸い上げて軽く歯を立てればぴくりと跳ねた。

「んっあぁ!」
「……っふ……」
「ひぅっんっあぁうッ!」

 名残惜しく唇を開放するととっくに限界を訴え続ける楔を打ちつけた。途端に零れ落ちる涙と甘い嬌声。楔を咥え込む蜜壷も更に複雑にうねり、ニールの背筋をぞくぞくっと快感が駆け上がる。

「あっあぅんっ!ひっくぅっんん!」
「っは……やっぱ……声が聞けると……すっげ、興奮する……」

 肉を打ち付ける音に混ざる刹那の声にうっとりと瞳を細める。顎を反らせ、涙を散らして啼き狂う姿に、ニールの絶頂がすぐそこまで迫ってきた。

「っひぁあ!イっんんっ……ぃくぅ!」
「んっ……こっち……もっ……げんっかいっ……!」
「アッアッあぁぁぁぁぁっ!!」

 身を縮めるようにしてぶるぶると震えたかと思うと、最奥を突き上げた瞬間に大きく仰け反った。ぎしぎしと軋むロープの音を耳にし、たわわに弾む胸に目を晦ませながら促されるままに欲望を吐き出した。

 * * * * *

「んー……ぉ……?」

 微かに聞こえるキーボードを叩く音に覚醒を促される。まだ重たい瞼を押し開くと緑のジャケットの背中が見えた。
 しばらくぼんやり見ていると、その緑色が自分の着用している制服の色だと気付く。それとともにもう少し視線を上げると柔らかく跳ねる黒髪が見えた。今度は逆に下りていくと、滑らかな肌に付いた紅い痕が目につく。

「っひぁ!!!?」
「……やっぱ残ったなぁ……」
「にっにぃる!起きて?!」
「んー……今起きた……」

 もぞもぞとベッドの上を移動して、端に腰掛ける刹那の体に寄り添う。着替えるのが面倒だったのか、シーツを軽く腰に巻きつけ、素肌にボレロのみを纏う姿は中々に色っぽい。
 生肌の腰に腕を回すと、不意打ちに驚いた刹那が慌てた声を上げる。それを無視して、擦れた紅い痕に唇を沿わせると、抱き寄せた体がぴくっと小さくはねた。

「せつなぁ?」
「……何……?」
「筋とか……痛めてないかぁ?」
「……すじ?」
「結構暴れてたろ?どっかいかれてたらやばいよなぁって思ってさぁ」
「?何の事だ?」

 肩越しに振り返った、きょとん、とした表情にびしりと固まってしまう。嫌な予感。とてもいや〜な予感がニールの笑みを引き攣らせた。

「……刹那……昨日、何あったか覚えてる?」
「昨日?昨日はスメラギに珍しいお菓子が手に入ったからと言ってもらったが……」
「うん……それで?」
「?それだけだが……」
「……そう……か……」

 全く予想していなかった、と言えば嘘になる。
 けれど、4年前とは打って変わってあれほどまでもしっかりとした雰囲気に、ほろ酔い程度だと思っていたが……
 現実はそこはかとなく厳しいらしい。

「(……どーすっかなぁ……)」

 ニールの脳裏に過ぎったのは昨日、刹那の餌食になったメンバー。
 刹那が覚えていなくても餌食にされた方はきっときっちり覚えているだろう。
 これからまた一波乱ありそうだ、と思わず重いため息を吐き出してしまうニールだった。


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