「はい…到着。」

 結局刹那は部屋に入ってもずっと首にしがみ付いたままだった。とりあえず荷物を下ろして上がり口に抱えたまま座り込むと膝の上で横抱きになった刹那のブーツを脱がしにかかる。ファスナーを下ろしたところでようやく動いてくれた。

「ちょいとだけ足浮かせてくれる?」
「…ん。」
「はい、おりこうさん。」

 首元に埋めた顔がようやく見えるとその表情は僅かに拗ねているように見える。両足からすぽっとブーツを抜いてしまうと座り込んだまま再び刹那を抱き込んでしまう。

「…どうした?」
「………」
「演技にしてはちょいとひっかかったんだけどな?」
「………気付いてたのか…」
「まぁね。長年傍にいるんだし…好きな子の事だから分かりますよー?」

 少し茶化し気味に言って頬を唇で擽るとまだ少し濡れた感触があった。結構長い間泣いていたんだなぁ…と変なところに感心して額同士をくっ付けると少し腫れた目元に掛かる濃い影を見つめる。伏せた瞳がゆるりと持ち上がるのを待ち続けるとそれほど待たずして見上げてきた。

「…すぐにばれた…」

 何を言うのかと構えていれば変装になっているはずの格好がすぐに見抜かれてしまった事についてだった。自分で太鼓判を押したこともあって、刹那に言い繕えないほどに確定されているとは思っても見なかったのだ。しかし…この点についてはいたし方ない部分がある。…なにせ…あの男が相手なのだ。一筋縄でいくわけがない。

「んー…それは…相手が悪いと思うけど?」
「………本当に?」
「うん。異常だろ?あの覚え方。」
「…ならいい…」

 それで納得したのか…興味をなくしたかのように、ふいっと顔を背けてしまった。けれどロックオンの腕は一向に弛まない。

「………で?」
「………」
「まだあるだろ?」

 弛まないのは…刹那がまだ何かに対して拗ねているからだ。彼女としては隠せていたつもりなのだろうけれど…ロックオンにはお見通しだった。変装が上手くいかなかったのなら、今度はもっと意表の突く格好をしてみせる、などというのが刹那だと分かっている。その刹那が今の会話で納得したというのは可笑しなことなのだ。

「………」
「言わないとこのままいるけど?」
「………どうして…」
「うん?」
「…どうしてあんたにはそこまで分かってしまうのか…と思っていただけだ。」

 呆れ半分に投げかけられる瞳にくすりと小さく笑いが漏れる。たとえ他の誰も気付かない微妙な変化でもロックオンは全て拾い上げていた。刹那にとっては完璧であると自負しているポーカーフェイスなだけに不思議なのだろう。しかし理由は一つなのだ。

「そりゃねぇ…」
「理由はいい。」
「え?」
「さっき聞いた。」

 そっけなく言われた言葉に苦笑が浮かぶ。刹那の言う通り…『刹那の事だから分かるんだよ』と言うつもりで居たのだ。ちゃんと分かってくれているあたり愛されているなぁ…などと惚気てしまいたくなるが、拗ねてる刹那相手では放置されてお終いになってしまう。…ということで今はぐっと耐える事にした。すると観念したのか刹那の頭がぽすりと凭れてくる。

「………、…じゃない。」
「…ん?」

 囁かれた言葉はあまりに小さすぎて聞こえなかった。一瞬戸惑いつつ首を傾げるとよほど悔しい思いをしているのか、ぎゅうっと背に腕を回してくる。

「…俺は…」
「うん?」
「……メロンパンなんかいれてない…」
「………」

 機嫌悪そうに呟いた言葉が一瞬にして頭の中を真っ白にする。
 そのまま過ぎる事…数秒…

「…〜〜〜ッ…」
「?…ロックオン…?」

 抱きついた体が僅かに震えだしている。どうかしたのか?と顔を見上げようにも抱き締める腕に力が篭って出来ずにいた。なんとか抜け出そうと胸元を押し返そうとするがやはり無駄に終わり途方に暮れ始める。すると…

「っ…っ…っ…っぷ…」
「?」
「…っくくく…あーッもうだめ!」
「!」

 ようやく声を出したかと思えば大笑いを始めてしまった。呆気に取られていると腕が解かれてその場に仰向けになってしまう。そのまま腹を抱えて笑うものだから徐々に苛立ちが募ってきた。あまりにもムカムカとしてきたので鳩尾目掛けて拳を振り下ろすとあっさりと掴まれてもう片方の手でも挑んだが、結局ヒット出来ず捕まれたままに引っ張られる。

「…ぅぷ…」

 寝転んだロックオンの上にぽふりと倒れこんでしまった。体を重ねるような体勢に降りようとしたがそれよりも先に背に回された腕でかなわなかった。

「ほんっと…お前さんてやつぁ…」
「…何だ…」
「可愛いすぎんだよ。」
「……意味が分からない…」

 解かれた腕に開放されたのかと思えば顔を持ち上げられる。上体を起こせばすぐ近くで顔を見合わせることになった。肩から流れ落ちる長い髪に指が絡められてちゅっと軽い音を立ててキスをされる。自分の髪ではないのに酷く恥ずかしい気になった。頬を擽られて髪を掻き上げられるとそのまま引き寄せられて唇を重ね合わせる。
 始めは軽いバードキスを繰り返していたのだが、徐々に深く重なっていつの間にか互いの舌を重ね合わせていた。離れる頃には息が上がり、…はふ…とため息まで漏れてしまう。

「…な、髪伸ばそうぜ?」
「……なんだ?いきなり…」
「んー?エロさが際立つなぁ…と思って。」
「………」

 急に持ちかけられた提案に首を傾げればさらりと理由を教えてくれる。しかしその内容に思わず額をぺちりと叩いてしまった。くすくすと笑い声を漏らしながらさらさらと髪に指を絡めてくる。

「これってさ…なんかで固定してあんの?」
「いや…被っただけだったと…」
「んー、と…あぁ、なるほどな。」

 女の子のおしゃれ事情を聞くのは野暮じゃないのか、とも思うが刹那もあれよあれよという間にセットされてしまったので早々に外してもらえるのはありがたかった。いつになく重かった頭が開放され、固まってしまった地毛を解すべくぷるるっと頭を振る。すると「猫みたいだな。」と笑われながらも手櫛で直してくれる感触が心地良く目を細めてしまった。

「ッ!?」
「お、だぁいた〜ん♪」

 背中を覆うウィッグが外されたことで隠されたバックスタイルを直に触られる。真正面からでは分からなかったが、襟回りを首の後ろでリボン結びにしてあり、そのすぐ下は真ん中辺りまでぱっくりと開いていた。肌の露出している部分に細い紐が交差しているあたりから編み上げタイプのブラを選んだのだろう。その隙間から手を差し入れると擽ったいだろう、刹那が身を捩る。

「ぅわッ!」

 ごろりと転がって上下の入れ替えをすると刹那をうつ伏せに押えつけた。布の間から覗く細い紐の交差に思わず舌舐め擦りをしてしまう。暴れないように両手を押えたまま口でリボンを解くと刹那の肩がぴくりと跳ねた。

「ろっ…ロックオン!」
「んー?」

 肌の上を縫うように滑る唇にぞくぞくと震えながら必死に呼びかけると間の抜けた声で返事をされた。若干の苛立ちが募りながらも現状打破の為に声を振り絞る。

「なにっ…して…ッ?」
「何ってもちろん。刹那を美味しく食べるんだけど?」

 さらりと返された言葉に思わず絶句しかけてしまう。更に浮き出た肩甲骨を舐められて慌てふためいた。

「ばっ…ここをどこだと思って!」
「ん?玄関。」
「分かってるんならっ…」
「大丈夫大丈夫。」
「なにがっ!?」

 扉一枚隔てた外はマンションの廊下だ。人の往来だってあるし、誰か尋ねてでも来たらと思うと背筋がぞっとする。それなのにロックオンは暢気な声で受け答えするものだから余計に腹立たしく大声を出してしまう。

「刹那が大声出さなきゃ大丈夫でしょ?」
「〜〜〜っ!!!」

 肩越しに見える顔はとても楽しそうで…その瞳に飢えた獣が潜んでいるようで逃がしてはもらえないと確信する。包みを開くようにゆるく開いた縁に指が掛けられて出来る限り大きく開かれた。二の腕辺りまで下ろされた衿回りに不安が湧き上がると肩に歯を立てられる。思わず出そうになった啼き声を両手で押さえこみ、何度か咬まれた後に首の後ろを咬まれると指の間から荒々しく吐き出した息が漏れた。

「…メロンパンねぇ…」
「…?…」

 フローリングのひやりとした冷たさから逃れるように腕を使って浮かしていると、ぽつりと呟いた声が聞こえる。なんだろう?と僅かに警戒していると隙間を潜り込んできた手にむにゅりと胸を鷲掴みにされた。

「ッん!!」
「刹那の胸はもっと柔らかくて温かいもんな?」

 小さな笑いと共に耳へ注ぎ込まれた言葉が熱く掠れた声によって語られて体がふるりと震える。好き勝手に揉みくちゃにされて敏感になってきた実が布に擦れてじんじんとしてきた。手から逃れるように自然と上がる上体が彼の胸に押さえ込まれ、浮いてしまった腰が密着する。ヒップにぐりっと当たる熱い塊に気づいてしまって顔が熱くなった。

「!」
「あぁ、気づいた?これでもかなり我慢してたんだぜ?」

 ぐいぐいと押し付けられる腰にその存在を更に意識してしまう。自然と涙ぐんできた目を固く瞑り、耳へと囁かれる声から逃げるように首を振った。
甘く掠れた声が耳を擽り、毒のように脳内へじわりと染みこむ様に流れてくる。

「な、刹那…想像できるだろ?」
「…ぅ…ん…?」
「コレに啼かされるとこ。」
「っ…!」

 わざとらしく腰を押し付けられて足の付け根へと当てられる。そのまま押し上げられるように揺らされてまだ大した反応をしていなかった花園がひくりと動いてしまった。

「刹那の可愛い花弁が口いっぱいに開いて咥え込んだら…」
「…っ…」
「一番奥まで…突き上げられるんだ…」
「…んっ……ぅ…」

 吹き込まれる言葉がそのまま脳裏に映像として浮かび上がってくる。まだ触れられてもいない花弁が…まるで言われるように熱い楔でいっぱいにされている感覚に襲われた。想像しないように身を固くするが、反応してしまう腰の奥が熱を持ち始めじわじわと濡れてくる。

「…こうやって揺らされて奥のお口をこつっ…こつっ…って叩かれる…」
「…ぁ…ぁ……」
「いっぱい叩かれて…気持ち良くなって…躯が痙攣し始めたら…」
「……ぁん…っ…」
「あっついの…注ぎ込まれて…」
「はっ…ぁ…」
「……イっちゃう…」
「ッ〜〜〜!」

 最後に一際強く押し上げられて熱が花弁に押し付けられた。その瞬間、本当に犯されている時のようにびりびりっと背筋を快感が駆け上がり大きく仰け反ってしまう。自ら押し付けるように腰を突き出し声が漏れないように必死に両手で押し殺した。

「あれ?ホントにイっちゃった?」

 しばらくの痙攣の後にふっと体から力が抜けおちた。止めていた呼吸が再開するも、塞ぐ前よりもっと荒くなっている。ぼやりと霞む視界の端に笑みを浮かべるロックオンの顔が見えた。

「刹那だけ気持ちよくなってずるいなぁ?」
「ぁ…やッ…」

 揶揄するように耳元で小さく笑われ、未だ両手に収められたままだった胸の身を布越しに摘まれる。酷く敏感な躯がびくりと跳ね、押え切れなかった声が漏れだす。

「っふ…ぁ…」

 しつこく押し潰され痛いのに気持ちいいおかしな感覚に戸惑いを覚える。逃げたいのにロックオンの手に抑えつけるように差し出してしまう躯が恥ずかしく否定するように首を振るった。

「そんなに気持ちいい?」
「やっ…ちが…〜ッ…!」

 耳元で笑みを含んだ掠れる声に背筋がぞくぞくとする。カップの中に潜り込んできた手が硬くなった実を弾いたり押し込んだりするから背筋を駆け上がる快感に喉が仰け反った。

「軽くイっちゃったか。」
「っは…ぁ…ぁ…」

 くたりと力なく床に崩れ落ち、肩で呼吸を繰り返しているとそっと頭を撫でられる。熱くなった頬に当たる床が冷たくて心地いい。躯中が甘く痺れ、指先ひとつすらまともに動かなかった。腰に回される腕にぴくりと反応するとまた笑い声が聞こえる。

「随分敏感なんだな、今日は。」
「…しら…なぃ…」
「玄関だから興奮しちゃってんのかな?」

 いい子だと褒められる代わりにそっと頬を擽るように唇が触れてくる。瞳を細めて甘受していると腕に抱え上げられたままショートパンツのファスナーを下ろされた。

「あっ…!」
「大人しくしてな?」
「っん…っぅ…」

 耳に舌を這わされて躯を震えさせながらも下腹で器用に動く手に意識が傾いてしまう。緩んだウェストから手を差し入れられるとぐるりとなぞる様に回されてもぞもぞとヒップを撫でられた。

「足開いてくれないと触れないんだけど。」
「…ゃだ…」
「ふふ…ベッドじゃもっとえっろい格好してんじゃん。」
「…ここではべつだ…」
「あらそう?」

 ロックオンが笑いながら言う通り、ベッドでなら裸になったりもっとあられもない格好をさせられたりしているけれども…すぐそこに外の空間がある玄関とは訳が違う。ベッドは顔を多少は隠せるシーツもあるし、枕もある。けれどフローリングしかないここではすべてが露にされてまったく感じ方が違ってくるのだ。せめてもの抵抗に足を閉じてみたが…きっとあっさりと陥落させられることは目に見えている。

「んじゃ…」
「…っ…」
「強引にいかせてもらいますよっと。」

 くすくすと楽しそうに笑う声を聞いていると腰を更に高く持ち上げられてズボンが半分脱げてしまう。その隙間を長い指が辿りぬかるんでいるだろう花弁まで潜り込んで来た。

「んんっ!」
「…ぐっしょりだな…?」

 ぬるりと滑る指先にどれほど濡れているのかが明確にされてしまう。小刻みに擦られるとくちゅくちゅといやらしい音まで聞こえてきた。その音とからかわれる言葉にすっかり尖ってしまった花芽を掠められて吐く息が更に荒くなっていく。

「…ぁっ…あ…ッ…!」

 なんとか声が漏れないようにと長い袖に口を押し当てるが執拗な指の動きに殺しきれないでいる。じわりと溢れる感触と躯の奥が更に熱くなる感覚に狂ってしまいそうだった。

「…ろっく…ぉん…ッ…」

 切なくて名を呼んでみると慰めるように頬へ口づけを落としてくれた。

「ひぁッ…ん!」

 触れる唇に強張る躯から僅かながら力が抜けるとそのタイミングを見計らってか指が潜り込んできた。足を閉じているせいか、ナカを擦られる感触が酷くリアルに感じられる。どんどんと胎内に入り込む指に躯を慄かせ、更に足を閉じようとしてしまうから余計に強く感じ取ってしまった。

「…キッツ…」
「あ…っあ…」
「そんなに絞められたら指が持ってかれちまう。」
「ぁ…う…」

 ぬくぬくと動く指に弾かれた弦のごとく躯が震え、芯がぐずぐずと溶けだしそうだった。傷つかないように気遣っているのか、ゆるゆると動く指が内壁を擦り、ナカで溢れかえる蜜を掻き混ぜてしまう。口も閉じられない程の荒い呼吸の中、ようやく質量に慣れた花弁へ更に指を突き入れられた。

「ひっんぅ!」
「腰突きだしてるけど…」
「あっ…ぁ…ッ!」
「物足りないの?」
「やっ…ちがッ…ぅんッ!」

 無意識の内に浮いてしまった腰は逃げたい理性とは裏腹に、もっとと強請るようにロックオンの手に押しつけられている。叫んだ事で絞め上げてしまう内壁が更に快感を拾い上げ、甘い嬌声を吐き出してしまった。その恥ずかしさに奥からまた蜜が溢れ出して蜜口からとろりと零れ落ちてしまう。花弁を伝う感触まで拾い上げる躯がもっとと強欲に強請り理性を食い潰していった。

「ほら、刹那。観念して足開きなさいな?」
「ッあ…やぁっ…」
「そんなこと言ってると…刹那のエッチな蜜でぐしょぐしょに濡れちまうぜ?」
「ふっ…うぅ〜…」

 意地悪な言葉に思わずうなってしまうが、胎内を犯す指の動きは容赦なかった。弛緩してきた内壁を擦り上げる動きが大胆になっていき、ぐちゃぐちゃと卑猥な音を響かせている。それほどまでに己が濡れている事も恥ずかしかったが、ズボンが濡れてしまう方が恥ずかしいと思った。

「ほら。どうする?」
「い、ゃ…ッぃやぁ…」
「いや?じゃあどうするの?」
「っぐ…か、らぁ…ッ!」
「なに?」
「ぬぐっ…からッ…ゆびぃ…うご、かしちゃ…やぁっ…」
「はい、よく出来ました。」


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