「仕方ねぇな…」
「…あ…」

 腰を抱える為にもしゃぶられていた指を抜き取ると、まるで玩具を取り上げられたような声を上げるから思わず笑いを漏らしてしまう。それをどう受け取ったのか刹那がしかめっ面を見せた。

「拗ねなさんな。」
「……」
「すぐに咥えてなんかいられなくなるぜ。」

 むすっとした顔に近づいて尖った唇を己のそれで覆い隠す。舌で閉ざされた唇を突付けば緩やかに解かれた。互いに舌を絡めている内に手を細腰に移動させて柔らかな桃肉を鷲掴みにする。

「ッあぁぁぁぁぁんッ!!!」
「ん、いい声。」

 力任せにぐっと引き寄せると最奥を楔が押し上げたのだろう、びくりと腰が跳ねる。それを両手で難無く押さえ込み軽い躯を持ち上げては打ち付けるように落とした。容赦なく打ち付ければ感じる衝撃が強すぎるのか刹那の躯が無意識に逃げようとうねる。

「あぅッ…くっん…っあぁ!」
「随分…気持ち、良さそうだな。」
「ぁあッ…んっ…はっう…ぅ」

 否定を表すのに言葉が紡げず上体を倒して首元に縋り付いてくる。額をぐりぐりと擦りつけることで反論をしたいらしい。突き上げる度に首筋へかかる吐息が甘く感じられる。ふわふわと揺れる髪に頬を擦り付けて笑みを浮かべた。

「ッうあぁ!?」
「っく…う…」
「やッ…ロックおんッ!」
「っすっげ…締め付けて…くれるじゃん…」
「ひッう!!」

 躯をびくびくと跳ねさせて喘ぐ刹那に、ロックオンも息を詰めた。掴んだ両手をずらして桃肉の隙間へと指を滑らせると後腔に指先を埋め込む。予想通りに跳ねた躯と上がる嬌声に笑みを溢したが、想像以上の締め付けに持ってイかれかけた。腹の底に力を入れて耐え抜いたが、胎内に埋めた楔がどくりと脈打ち体積を増やしてしまう。

「お仕置きってんならさ…ついでに…全部開発するのも…いいかと思って…な。」
「なにッい、てッ…!」
「ほら、ココ。ぞくぞくするだろ?」
「あっぁあッ!」

 更に指を埋め込み内壁を撫でるとすぐ隣にある己の楔が分かった。内壁越しに擦り上げれば躯を摺り寄せてくる。縛り上げた手でシャツを握り締めカタカタと震え出した。

「ッや、やだっあ!」
「イヤ?こんな美味しそうに含んでおきながら?」
「ちが、ちっがうぅ!」
「何が違う?」

 首筋に縋りつきながら必死に言葉を紡ぐ刹那に殊更優しげな声で問いかける。それすらにも感じてしまうほど敏感になってしまっているのか、楔を包む蜜壷も指を咥えさせた後腔もきゅっと引き絞られた。すぐにやわやわと蠢く内壁に背筋を震わせ泣きじゃくりそうな刹那の米神に口付けを施す。

「何が違うって?」
「もっ、だ め…なんっだ…」
「主語が抜けてる。何がダメだ?」

 躯の限界が近く言葉が上手く紡げなくなっていることを察して手の動きを止める。前も後も埋め込んだままだからほんの気休めにしかなりはしないが、まだ先程よりは話せるだろうとの配慮だ。躯を揺さぶっていた手で刹那の首を捕らえると顔を合わさせる。赤く染まる頬を涙がぽろぽろと流れ落ち緩く開かれた唇からは荒々しい息が吐き出されていた。普段からは決して想像など出来ない艶のある表情に舌舐め擦りしてしまう。掬い上げるように目尻へ唇を寄せて舐め上げた。

「言えよ、このままはもっとイヤだろ?」
「も、ぉ…」
「もう?」
「くる…しぃ…」
「じゃあどうしたい?」
「イ、きたぃ…イきたぃい…ッ!」
「ん、よく出来ました。」

 くしゃりと歪む顔に唇を寄せて躯を抱え直すと体勢を入れ替えてソファに押さえつける。間髪いれずに勢い良く腰を穿つと刹那の背が仰け反った。

「ひぁん!」
「好きな、だけ…イきな!」
「んっあっあぁっあぁぁッ!」

 腰を掴み荒々しく揺さぶれば揺するだけ刹那の嬌声が上がる。ゆらゆらと不安定に揺れていた足が腰へと絡みつき縋るように腕が伸ばされた。悦楽に濡れた瞳が必死に語りかけてくる様に顔を近づけてやると、頬に指が這わされる。

「ろっ、くぅ…おんっもぉ…!」
「…ッ…ふ…」

 自分を保つのに精一杯のくせにこうしていつでも誰かのことを想う刹那に一瞬苦笑をしてその縛ったままの腕に首を通す。顔が近づくとくっと腕を引かれて口付けを強請られるから素直に口付けた。

「ッあぁ!も、もぉ!」
「いぃぜッ…っイけよ!」
「っあぁぁぁー!!」

 一際強く穿つと一段と強い締め付けに楔が絡め取られる。刹那がイったと理解するよりも先に蓄積させた熱を胎内へと放った。2・3度に分けて放たれた熱に刹那の躯がぶるりと震える。力を失った楔をずるりと引き抜くと小さく啼いた声が聞こえた。かくりと首が仰け反るのに笑みを浮かべ腕の拘束も解いてしまう。ソファの上でころりと寝転がらされてうつ伏せにされたところで刹那が不思議そうに見上げてきた。

「…ろっくお…?」

 僅かに呂律の回っていない声ににっこりと笑みを浮かべたロックオンは、その頬に張り付く黒髪を掬い上げた。

「まだ1回しかイってねぇからな。」
「………え?」
「もう2・3回はイかねぇと。」
「ッ!!!!!」

 ぐったりとしたまま横たわる刹那の細腰を掴み上げると、蜜に混じって白濁した液を垂れ流している花弁にすでに熱く滾り始めた楔を押し当てる。それによって明確に意味を理解した刹那の顔が引き攣った。

「むっ無理だ!」
「お前さんの意見は聞いてねぇの。」
「ロックオンッ!」

 なんとか逃げようとする刹那の頭を押さえつけて未だ余韻に震える蜜壷に楔をつき立てた。途端に締め上げる花弁に熱くため息を吐いてクッションに縋りつく刹那の頬に唇を寄せる。

「早く終わりたかったら…締め付けて俺を早くイかせることだ。」
「ん…ぅ…」
「俺の気が済むまで…とことん付き合えよ…」

 目尻に溜まった涙を吸い上げると腰を打ちつけ始めた。

 * * * * *

 全身を襲う気だるさに寝返りをうち枕へ顔を埋めると頬に違和感を覚えて指を滑らせた。すると腫れていた頬にシップが貼り付けられている。首を傾げると窓辺に腰掛けているロックオンに気付いた。上手く力の入らない体をどうにか動かして上体を起き上がらせると手元を見下ろしていた彼の顔がこちらに向けられる。

「お。おはようさん。」
「……それ…」
「もう終わるから待ってな。」

 そう言って再び俯くと器用に動く指先がくるくると回り、横へスライドすると指に針と糸があった。逆の手にハサミを持つと糸の生える布の辺りに移動させてシャキ…と小気味良い音を奏でる。じっと見ていると完成したのか、ばさりと広げられたそれは刹那の上着だ。

「喉渇いてないか?」
「…ロックオン?」
「ん?」
「何故?」
「何故?…とは?」
「その服…昨日…切り刻んで…?」
「しねぇよ、んなこと。」
「…でも…?」
「お仕置きするのにハサミ使ったのは使った。でも服をボロ雑巾にゃしねぇさ。」

 きょとりとロックオンの顔見つめたまま疑問符を飛ばし続ける刹那に苦笑すると上着を片手にベッドへと近寄ってきた。端へと座ると未だにじっと見上げてくる刹那の頬を指先で擽りゆっくりと口を開いた。

「お前さんに恐怖を植えつけるのも目的だったんだが、ボタンが幾つか弛んでたからついでに…な。」
「…しかし…後にはまったく…」
「ないように感じたのは腕から落としたからだろ。すっかり怯んで感覚が麻痺してたんじゃね?」

 全て剥ぎ取られた感覚があったので疑問に思い聞いてみればどうやら気付かぬうちに随分混乱していたようだ。彼が言うにはボタンを全て外した後、片手ずつ縛り上げてあった手首を通り過ぎソファに巻きついたターバンのところに引っかかった状態にしていたらしい。現に目の前にある上着はたったいまロックオンの手でボタンを全てつけて貰いどこも解れも見せず存在している。
 自分の思い込みに囚われていたのだと思い知らされて呆然とする刹那にロックオンは小さく笑いを溢した。
 どうやら視覚を失くしたことでの効果は絶大だったらしく、今回のお仕置きは思った以上の成果を上げたようだ。なにより今刹那は己の姿にまったく気付いていない。

「で?」
「…え?」
「いつまでサービスしてくれるわけ?」
「?意味が分からない。」

 こてん、と首を傾げ予想と違わぬ反応を返す刹那にロックオンは小さく笑いを漏らしてしまう。意地悪な質問の仕方をしている自覚はあるが、わざわざ指摘してやるほど優しくもない己に苦笑を漏らして上体を僅かに屈めて刹那に迫った。

「あぁ、悪い悪い。」
「?」
「誘ってくれてたんだ?」
「ッ!!!」

 暴れられる前に、と両手を掴み取りベッドへ押し付けると肌で感じる風の感覚と背に当たったシーツの感触で漸く気付いたようだ。

「せっかく服も着ずに待ってたのに。鈍くて悪かったな?」
「ちっ違う!!」

 顔を真っ赤に染め上げて首を振るも肌に落ちてくる唇を止めるには及ばず、胸の中心へ口付けが施される。ちゅっと軽い音と柔らかな感触に体が勝手に跳ね上がりますます恥ずかしくなった。ズボンもTシャツも着ているロックオンと打って変わって刹那は何も身にまとっていない。シーツすら巻きつけずに起き上がっていたものだから、どこも隠していない、生まれたままの姿だった。

「あっ!」

 寄せられた唇の柔らかさがふと離れるとぺろりと舐め上げるから未だ敏感な躯はぴくりと跳ねてしまった。じんっと熱を持つ躯の芯に太腿を擦り合わせるとくすくすと小さく笑う声が聞こえる。

「まだまだ敏感に感じるんだなぁ…」
「やっ…も、やめっ…!」
「んー…もうちょい…」

 つぅ…とゆっくり這っていく舌の感覚に震える躯を持て余して顎を仰け反らせた。まるでそれを待っていたかのようにロックオンの唇が上り詰めてくる。頬にキスを落とされて緩やかに瞳を開けば微笑を称えた表情が覗き込んできた。

「もう今回みたいなことするな…」
「………」
「…つってもお前さんは聞かないだろうからな。」

 じっと見上げたまま返事を返さないでいると、その意味を正確に汲み取ってくれたらしく微笑は苦笑に変わってしまった。悪戯に鼻頭を噛まれぎゅっと閉じた瞳を開くと見慣れた笑みがそこにある。

「せめて俺の知らないとこで傷は作るな?」
「……了解。」

 それなら出来る…と思って素直に頷けば蕩けるような笑顔で口付けを落とされた。


10/07/12脱稿
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