「ぁ…はぁ…ん…」
「…このまま教えちまうか…」
「ふ…ぁん!」

 刹那の手に己の手を重ねて中に入った指にも己のそれを重ねて動かしてみた。よほど感じ入っているのかふるふると震える躯で縋り付いて来るのに、抱き寄せる腕に力を込めて更に指を動かす。

「こうやって動かすと気持ちいいだろ?」
「あっ…ゃんッ…あぅ!」

 いつもの愛撫とさほど変わらない動きをしているはずが刹那の乱れっぷりが激しい。自らの指で感じる羞恥と一度イかせようとする指の動きに翻弄されているらしく、頭を振り乱して啼き狂っていた。

「もうちょいでイくか?」
「やぁ!あッあぁ!」
「いいぜ。イっちまえ、刹那…」

 刹那の指を巻き込み絶頂へと導く。一際強く押し込むと声なく背を仰け反らせて果ててしまった。きゅきゅっと締まる内壁にイったのが分かる。しばらく強張ったままだった躯から力が抜けると花弁を弄っていた手がずるりと落ちていった。

「ど?良かった?」
「…ぅん…」

 素直に頷く通り、かなり感じ入ってしまった証拠に2人の手がイった際に噴出した潮で濡れていた。手首を伝い流れる液に舌を這わせているとシャツをくっと引かれる感覚に刹那の顔を覗きこんだ。

「ろっく…おん…」
「うん?」
「まだ…あつい…」
「…だろうな。Dr.モレノも言ってたろ?」
「…え?」
「誰かにしてもらった方がいいって。」
「ぅわ!?」

 もじもじと内腿をすり寄せている刹那に淡く笑みを溢して、ベッドの上へころりと寝転ばせ腰を持ち上げる。後転の途中のような形にされて自然と首と肩で体を支える体勢にされた刹那が縋るものを求めて両手をシーツの上へ彷徨わせた。きゅっとシーツを握り締めたと同時に膝を思い切り左右に開かれると濡れた花弁に空気が触れて躯を跳ねさせてしまう。

「ロックオン!?」
「お〜…ぐっちょぐちょに濡れてんなぁ…」
「!!」
「物足りねぇの?ひくついてるけど。」
「やッ!見るなぁ!!」

 視界を遮られても一応どういう体勢にされているかは分かるが、ロックオンがどこを見ているのかは分からず、言葉にされて知った。一気に羞恥が駆け巡り無駄な抵抗だとは分かっているが、なんとか隠そうと手を伸ばすとそれよりも先にぺろりと舌が花弁の上を這う。

「ひゃぅ!」
「次々溢れてきて…垂れそうになってんぜ?」
「やっ…やぁ…!」

 音を立てて吸い付かれてびくびくと跳ねる中で、必死に手を伸ばしてその柔らかな髪に触れて引き離すように力を込めてみたがびくともしなかった。ぬるぬると這い回る舌が花弁を舐め上げ中へと潜り込んでくる感覚に躯中の力が抜け落ちる。

「自分でやっても確かに鎮められるけどさ…」
「あっ…あっ…!」
「理性が働いてセーブしがちになるからな。」
「ぁう…ッん!」

 シーツの上に腕が落ちるとロックオンの指が差し込まれる。ゆっくりと入ってくる感覚にぞくぞくと背筋を微電流が走りぬけた。思わずきゅうっと締めてしまった内壁に長く骨ばった…己の指と全く違う指を感じ取ってますます締め上げてしまう。躯中を走り抜けた快感が少し治まるとそのタイミングを見計らったように指を増やされて背が仰け反った。

「こんな風に追い上げて…」
「ぃあッあぁあ!!」

 じゅぷっと耳を塞ぎたくなるほど厭らしい音を立てて蜜壷をかき回されると思考が真っ白に染め上げられていく。急速に追い上げられくらくらする中ロックオンの指が的確に感じすぎるポイントを攻め立てた。躯の隅々まで甘い疼きが走り出すと絶頂がすぐに襲い掛かってくる。

「思いっきりイけないだろ?」
「ッあぁああぁぁ!!!」

 がくがくと震える四肢を持て余すとすぐに荒れ狂う快感の波に突き落とされた。爪先をぎゅっと丸めシーツを引っ張りこれ以上ないくらいに背を反らせ、嬌声を張り上げる。頭の先から足の指先まで余すことなく広がる余韻が徐々に引き始めるとようやく強張った躯から力が抜けた。
 浅い呼吸を繰り返しているとずるりと指が出て行った。躯中がだるくて指一本すら動かすのも億劫に感じていると、抱え上げられた腰が下ろされる。すると太ももにぽたりと何か落ちてきた。

「ッ!?」
「うん?あぁ、垂れちまったな。」
「な…に…?」
「刹那の愛液。」
「愛…?」
「イった瞬間に一杯噴出した汁のこと。」
「ッ!!」

 説明を聞き終えたとき、聞かなければ良かったと心の底から後悔してしまった。顔を真っ赤にしてしまったのが分かったのだろう、小さく笑うロックオンの声が聞こえる。居た堪れなさにぷいっと顔を背けると少しの間静かだったのが僅かに水音が聞こえてきた。宇宙空間で雨という事は有り得ないので何だろう、と考えてると一つ思い当たるものが脳裏に浮かぶ。目隠しされたままでは確認出来ないので恐々尋ねてみる事にした。

「…ロックオン?」
「んー?」
「何…してる?」
「何…とは?」
「水…みたいな…音が…」
「あぁ。手にかかった刹那の愛液を舐め…」
「〜〜〜ッ!!!」

 やはり聞かなければ良かったと更に後悔を募らせ反射的に足を振り回した。けれどその踵はロックオンにヒットすることなく受け止められる。

「おま…見えないくせに寸分違わず急所狙うなよ。」
「黙れ!手は洗え!舐めるな!」
「えー?勿体無い。」
「勿体無いことあるか!」
「お、じゃあ思う存分啜ってもいいんだ?」
「なっ!?ち、違ッ…」

 とても楽しそうなロックオンの声に嫌な予感がして逃げようとしたが時すでに遅し。一度開放された腰を再び引き寄せられてしまった。それでも何とか逃れようとしたが、それよりもさきに柔らかく温かい、濡れた感触が太ももを這い上がる。今度は聞かなくてもその正体は分かってしまった。

「ぁッ…や、め…んん!」
「ん、おいし…」
「ば…かぁっ…ッ!」

 内腿を伝いあがればとろりと蜜が溢れる花弁に辿り着く。ソコに口付けて吸い上げればびくっと躯を竦ませる様が愛らしい。外側を捲って真っ赤に熟れた花弁を綺麗にするよう蜜を舐め取れば次々に溢れ出す。留まることのない源泉の様で、ここまで感じてくれる事に歓喜で心が震えた。

「ぁ…ぁ…」
「…刹那…」

 舌のみでは飽き足らず指も使って散々掻きまわしていると抵抗が弱くなってきた。そろそろか、と顔を上げるとくたりとしている刹那が身悶えていた。伸び上がって頬に口付けるとぴくりと震える。気配を頼りにこちらを振り向くと腕を伸ばし、腰に足を絡めてきた。

「…ろっくぉん…」
「俺のが欲しい?」
「ん…ほしぃ…」

 汗で額に張り付いた髪を掻き上げてやるとうっとりした声で応えてくれる。このところ素直に快感を受け入れるようになってきているが、ここまで焦らしたりしなかったからかすっかり理性よりも快楽が勝っているらしい。せっかくだから、と目隠しを取り除けばとろんと溶けた瞳がゆっくりと開かれる。年齢にそぐわず媚態を晒す刹那にくらりと眩暈が起こった。

「ッんあぁぁぁ!!!」
「っく…ぁ…」

 どくりと脈打ったのが己でも分かるほどに張り詰めた肉棒をぐん、と突き入れると刹那の背が仰け反った。迎え入れられた瞬間にきゅきゅっと締まる内壁にロックオンも吐き息に熱が篭る。思わず息を詰め、全身を駆け巡る波が治まるのをじっと耐えて待った。

「軽く…イったのか…」
「…ぁふ…んっ…うぅ…」

 切なげに寄せられる眉と紅潮を増した頬、固く閉じられた目尻からは静かに涙が流れ落ちている。その雫に唇を這わせて強張った躯を解すようにキスを散らした。ひくりと小さく震える躯を抱き寄せて背を撫でてやるとぎゅっとしがみ付いてくる。

「大丈夫か?」
「ん…いぃ…から…」

 ゆるりと解けた内壁が奥へと誘うように蠢く。その感覚にロックオンは熱い吐息を吐き出すとその揺れる細腰を鷲掴んだ。

「ッあ!」
「我慢してた分…抑えが利かねぇからな?」
「が…まん?」
「そ。刹那の痴態を見せ付けられる間の我慢。」
「ッあぅ!!」

 不思議そうに見上げてくるのに思い切り腰を打ち付けるとびくんと仰け反った。震える指で必死にティーシャツを握って流されまいと耐える姿は更にロックオンの劣情を煽っているなど、刹那は微塵も知らないだろう。瞳を眇めて淡く笑みを浮かべると、ぺろりと唇を舐め上げて律動を再開する。

「あッ!やぁ!はげ、しぃッ!」

 容赦なく最奥目掛けて叩き付ければ涙を散らして刹那が身悶える。暴れる躯を難無く押さえつけもっと、と口に出す代わりに赤く熟れた胸の実に齧り付いた。

「ひあぁ!!」

 ガンガンと揺す振られる視界が涙で滲む中、胸の上を擽る柔らかな髪に手を伸ばす。口付けられてちゅくちゅくと音を立てて弄るロックオンを引き剥がしたいはずなのに、痺れた指は髪に絡めるだけで精一杯だった。躯中に痺れが広がる感覚に縋るものを求めて腕だけでなく足もロックオンに絡める。

「やッやぁっも…ゆるしッてぇ!」
「まだ、だ…もうッ…ちょい」

 躯内を暴れ回る波に訴えればまだだと押し込まれる。もう言葉も告げないほどに呑まれてしまうと、両手をシーツに縫い付けられ顔が近づく気配がした。ゆるりと瞳を開けばぼやけた視界に眉間へ皺を刻んだロックオンの顔が見える。その切なげな表情に鼓動が跳ね上がった。

「っイく…ぞ…せつな…」
「んっあ、ぁあ、あ、あッ」

 言葉を紡げない口の代わりに重なった手をぎゅっと握り締める。すると彼が小さく笑みを浮かべた気がしたが、それをもう一度認識する前に一際強く押し上げられて何もかもが真っ白に染まってしまった。

 * * * * *

 ふわふわと揺れるような感覚にゆっくりと瞳を開けば温かな色彩が迎えてくれた。

「おはようさん。」
「……ろっくお…?」
「意識飛んじまったんだよ。」
「……ぅん…?」

 何度か瞬きを繰り返しているとくしゃりと髪を掻き回される。ちらりと顔を見上げると苦笑を浮かべているようだ。

「ま、なんにせよ。体は大丈夫か?」
「…ん。」

 よく分からないが頷いておく事にした。すると苦笑からいつもの柔らかな笑みを浮かべてくれる。ふと肌寒さに小さく震えると離れた体が再び抱き寄せられた。掛け布を肩まで引き上げ包むように抱き込まれるとその温かさに睡魔が襲ってくる。

「眠いなら寝てもいいぞ?」
「ん…ろっくおん…」
「ん?」

 すでに呂律が回らなくなりかけている口を何とか開いて呼びかければきちんと反応を返してくれる。それに安心すると彼の背に腕を回した。

「おしえて…もらったけど…もう…しない…」
「へ?」

 よほど驚かせてしまっているのだろう、ロックオンの瞳がきょとりとまん丸になってしまった。それがなんだかおかしく思えてじっと顔を見つめたまま残りの言葉を伝える。

「もうしないって…」
「だって…」
「お、おう。」
「ろっくおんに…してもらうほうが…すごく…きもちいぃ…」

 言葉の最後は睡魔に呑まれて小さくなっていってしまう。それでもちゃんと伝えるべきことは伝えたので満足して眠りに堕ちていった。

「…すー…」
「………………」

 穏やかな表情を浮かべすっかり寝入ってしまった刹那とは対照的にロックオンは脳内大パニック中だ。安らかな寝息を立てる刹那の顔を見つめたまま口だけぱくぱくと開閉を繰り返している。

「(き…き…も…きもち…いぃって…)」

 刹那はきっと無意識なのだろうけれど…言葉を伝えた瞬間に淡く柔らかな笑みを浮かべていた。それは滅多と見れない笑顔であると同時にロックオンの心臓にざっくりと矢を突き刺してしまっている。
 じわじわと赤くなる頬を分かっていてもどうしようも出来ず、抱き寄せた腕が変な緊張で強張っていく。今ここでこの嬉しさを噛み締めて身悶えたいところだが、そうすればもれなく腕の中で気持ち良さそうに眠る刹那を起こしてしまう。天秤にかけた結果刹那の眠り優先という結論に至り、腕が震えないようにと必死になっているのだ。

「(あ?待てよ…)」

 顔がニホンにある仁王像のような表情になりつつある時、はたと気付いた事がある。

「(一人エッチしないってことは…またいつ何時今回みたいなえろい顔して誰かに合うかもしれない…てことで…)」

 根本的な問題が解決出来なかった事に気付いたのだ。今度は違う意味で身悶えたくなってきた。

「(一人でするくらいなら俺にさせてほしいってのも本心だが…下手に我慢してその間にとか…まずいんじゃねぇか!?)」

 さっきまで赤かった顔が今度は真っ青になり、ついでに言うなら冷や汗もだらだらと流れてきている。顔だけ天井に向けて音にならない声で唸ってしまった。何か解決策を練らなくてはならない、と眉間に深い皺を作ってぐるぐると思考を回す。

「(端末で連絡するようにしてテレフォンえっ…いや…コレは俺もキツイ…見えてんのに触れないとか気が狂う…や、それ以前に端末使ったらティエリア辺りに筒抜けになりそうだよな…こぇえ…じゃあなるべく四六時中一緒にいる事が先決になるな……ミス・スメラギに言って同じミッションへ…だめだ…それじゃあ鋭い予報師にばれそうだ…)」

 一向に希望の光を見出せずに結局その夜も一睡も出来なかった。
 翌日食堂に現れたロックオンが死神を背負っているかのような浮かべているので誰も…あのリヒティですら近寄れなかったのだった。むしろ下手に声を掛けて厄介な事に巻き込まれたくないというのが本音。
 一方、原因の刹那はというとすっきりした顔をしている。ついでに肌がいつも以上に艶々していた、というのはクリスの証言。
 全貌を知っているモレノは憐れみの瞳でロックオンの背を見つめていた。


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