−…暑い…

−…熱い…

−…あつい…

−…アツ…イ…

 システムダウンによって暗くなった空間で一つ息を吐き出した。
 ついさっきミッションを成功させて帰ってきたわけなのだが…どういうわけか体を駆け巡る熱は治まらなかった。いつもなら戦闘による興奮は戻る頃には引いていたのだが、今回は篭ったまま。吐き出す息の熱さに眩暈が起こりそうだった。

『おーい、刹那ー?』

 パネルをぼんやりと眺めていたら外から声が聞こえてくる。どうやらなかなか出て来ない自分を不思議に思われたようだ。気持ちを少しでも落ち着けようと大きく深呼吸をしてハッチを開く。

「お、やっと出てきたな。」

 コクピットから出てくればハロを小脇に抱えた男の笑顔が迎えてくれる。その横に居る整備士の表情も明らかに安堵したような笑みだ。

「整備はこっちでやっとくから。お前さん達はゆっくり休んでおけ。」
「………」

 ウインチロープで下りれば整備士、イアンがハロを連れてエクシアに近づいてくる。総合整備士の彼とデータを取りに行くのであろうハロに任せておけば安心なのでこくりと頷いた。その彼の後姿を見送ると頭に重みが感じられる。その正体はさほど考えなくとも予想はつくのだが…

「いつまでもヘルメット被ってないで脱いだらどうだ?息苦しいだろ?」

 くるりと振り返れば予想通りの笑顔にかち合う。コンコン、とバイザーを指先でつつかれて、そういえばそうかも…と素直に脱ぎ捨てれば男の…ロックオンの瞳が僅かに見開かれた。

「…刹那…」
「……なんだ…?」
「ロックオン!刹那!お帰りー!」
「お疲れ様ー。」

 ロックオンが言葉に詰まっていると彼の背後から明るい声が上がる。そちらへと視線を走らせれば先ほど着艦のオペレーションをしてくれていたクリスと、あちらもミッションを終わらせてきたのだろう、パイロットスーツを着たアレルヤだ。わざわざ出迎えてくれたその二人に向き直ろうとしたが、伸びてきた手によって阻止されてしまう。

「!?」

 パイロットスーツに包まれた指が頬を滑ったと思うと、ぐいっと引き寄せられた。突然の事に身構える事も出来ず、意図されるままに彼の胸元へと顔を埋める事になる。出撃時以外ではいつもスーツのフロントファスナーを弛めている彼は、今も例外ではなく…頬には薄いインナーを隔てて体温が伝わってきた。

「あれー?刹那、どうかしたの?」
「気分悪いとか?」

 すぐ近くまでやってきた二人には、刹那がロックオンに引き寄せられたのではなく、凭れかかっているように見えるらしい。不思議でならないといった声音と、心配そうな声音が聞こえる。しかし半ば押さえつけられている状態では、刹那に口を開く事など出来ない。何らかの受け答えをしたいのに出来ない状態で、刹那は成り行きを黙って聞くことになった。

「大丈夫なの?ロックオン。」
「あぁ、疲れがどっと出たみたいだな。ちょっとふらついてたんだ。」
「!」

 明らかに見当違いな事を言い出したロックオンに抗議しようと頭を押さえる手から離れようともがく。けれどびくともしないばかりか更に強く押し付けられてしまった。

「〜〜〜!!」
「?刹那…もがいてない?」
「うーん…認めないんだよなぁ…」
「それって…無茶してる?」
「だろうな。」
「〜ッッッ!」
「え!?じゃあ早く休ませてあげて!」
「んじゃ、ちょっくら寝かせつけてくるわ。」
「「よろしく〜!!」」

 勝手に話を纏められたかと思えば、急に抱き上げられてしまう。ぐるんっと回る視界に目を回していると、霞んだ視界に手を振っている2人が見えた。その光景に、はたと我に帰れば周りの景色がどんどんと流れていく。見覚えのあるトレミーの廊下が、倉庫への扉が遠のいていくがそれは見慣れた道順で…気付けば彼の部屋の前まで来た。慣れた手つきで扉を解除されるとそのまま中へと連れ込まれた。

「…なんの真似だ?」

すとん、と漸く下ろされたところでじろりと睨みつけると苦笑を返される。

「…お前さんね…そんな顔を誰かに見せられるわけないだろう?」
「…俺はもともとこういう顔だ。」
「ち・が・う。」

 言っている事が分からない、とばかりに首を傾げればぐっと鼻先に指を押し付けられた。なんだか子供扱いを受けているようでむっと見上げれば、こちらも少々不機嫌なのか、眉間に皺を寄せている。

「何が違う?」
「物欲しそうな表情してんだよ。」
「?ものほしい?」
「そ。単刀直入に言えば…『えろい顔』。」
「……!!?」

 ぐっと近寄ってきたと思えば耳に吐息混じりの言葉を吹き込まれる。ざわり、と背筋を駆け上る感覚に慌ててロックオンの顔を引き剥がした。まだ耳元に吹きかけられた息の熱さが纏わり付いている様で無意識の内に耳を手で押さえてしまう。

「して…ないッ…」

 さっきよりも瞳を吊り上げて睨みつけている刹那だが…ロックオンにしては『それ』は逆効果だった。
 エクシアからなかなか下りて来ないのを心配して声を掛ければようやく出てきた。ヘルメットを被ったままだったのでその時点では気付かなかったが…脱いだ時に「しまった」と思った。上気した頬…とろん、と溶けたような瞳の色…いつもきゅっと結ばれている唇は僅かに解かれ…明らかに欲情している表情だった。戦闘の余韻も考えられたが…色々な表情を見てきたのだ。僅かな違いでも分かってしまう。もしアレルヤとクリスが来なかったら口づけていたかもしれない。
 刹那に限ってないとは分かっているが…誘っているのかとも考えて部屋へと連れてきたのだが…どうやら『これ』は無意識だったらしい。それならそれで…なおさら性質が悪い。

「…気付いてないなら余計に危ないよな…」
「…なに…」

 自分との距離を開ける為に胸へ押し当てられた手を掴み上げて背中に腕を回すとぐっと引き寄せる。すっぽりと腕の中に納まるその存在ににっこりと微笑みかけた。

「無意識にえろい顔されたら押えが利かないんだよ。」
「ッんぅ!」

 顎を掴み上げてその唇に己のそれで覆い尽くしてしまう。驚きに固まってしまった舌を絡め取り吸い上げるとびくりと体を震わせた。自分が何をされているのか漸く理解出来たのか逃れようと足掻き始めているが…もう遅い。

「っ…く…ふぅ…」
「大人しく堕ちなさいな?」

−なぜこの男はこうもあっさり分かってしまうのだろう?
「ほら…顔上げて。」
−自分ですら理解していない熱の正体も…
「立ってんの辛かったら壁に凭れとけ。」
−『それ』の逃がし方も…
「…もうちょい…我慢な?」
−すぐに理解して…
「そ。いい子だ。」
−…俺を開放に導く…

 シャワーを出したままの浴室は徐々に湿気と熱によって温まり、ぼんやりとした頭の中を、さらに霞ませてしまう。頭上から注ぐお湯に濡れた髪を額に貼り付け間近で囁くロックオンの顔をじっと見上げていると、前髪をかき上げられた。開けた額に唇を落とされて、そのままあちこちに触れてくるから首に腕を回してぐっと顔を引き寄せる。そうすれば意図が伝わったのだろう、唇へと落ちてきた。

「…は…」

 戯れのように口付けを繰り返していれば、パイロットスーツとインナーの隙間に指が潜り込んで来た。水を含んで肌にぴたりと吸い付くインナーは、布一枚隔てているはずの指の感覚をはっきりと伝えてくる。さわさわと擽るように触られる感触に背筋がぞわぞわと震えた。けれどそれは『嫌悪』ではなく、『物足りなさ』を訴えている。

「ん…ぅ…」

 もどかしさに刹那が舌を伸ばして自ら絡めれば一瞬目を瞠った後ふわりと緩められる。ようやくスーツを脱がしに掛かってきた。肌を撫でるように腕から落として、剥き出しになったところで改めて首に回すよう促される。されるがままにしていると擦り付けていた舌を柔らかく噛まれた。思わず詰まった息を吐き出すと唇を離されてしまう。

「…ぁ…」
「スーツ…脱いじまおうか…」

 無意識に漏れた声に頬を撫でて宥められると、その場にぺたりと腰を下ろさせられた。力の入らない四肢を投げ出していると、恭しく足からパイロットスーツを引き抜いていく。手際良く脱がしていくロックオンをぼんやりと眺めているとあっという間にインナーだけになってしまった。青いパイロットスーツをざっと畳むと己のスーツを脱いでしまう。徐々に露になるしなやかな筋肉のラインを見上げていた刹那はぴくり、と体を跳ねさせると慌てたように顔を背けてしまった。

「?刹那??」
「………」

 緑のパイロットスーツも同じように軽く畳んでいると刹那がぎゅっと体を縮めてしまった。突然どうしたのかと首を傾げていると黒髪の隙間から覗く頬と耳が真っ赤に染まっているのが見える。何か恥ずかしがるような事したかな?と逡巡しているとふと下半身の変化に気付いた。思わず苦笑を浮かべてしまう。

「俺の息子さんは素直だからなぁ…」
「……」
「刹那のココ…狙い撃ちたくて堪んねぇの…」
「ッんぅ…!」

 抱き込んだ太ももの隙間に手を差し入れ、その付け根にある小さな割れ間に指を滑らせれば躯がびくんっと跳ねる。更にきゅうっと躯を縮めた刹那を包み込むように腕を回して耳に口付けた。柔らかな感触を楽しむように撫でればふるふると小刻みに震え、僅かに息が乱れているのが分かる。耳を唇で食み脇腹を撫でれば耐えられないのか首を僅かに竦めて逃げを打つ。躯から力が抜けるにつれゆっくりとタイルの上に組み敷き、露にされた顔に口付けを落とす頃には完全に横たわり指一本動かすのも億劫になっていた。

「…ぁ…ぁ…」
「……えっろい顔しちゃって…」

 間近で顔を見つめられているのは分かっているが、掠めるようにしか触れてこない指先に焦れて躯中が疼き構っていられない。もっとちゃんと触って欲しい、と勝手に動く腰を止めようともせず霞む視界でロックオンを見上げれば瞳を細められた。切なげに寄せられた眉根が、僅かに開かれた唇から漏れる息が甘く更に虐めたくなる欲に駆られ、まだまだ幼く薄い胸に顔を伏せる。

「ひゃぅ!」

 黒のインナーを押し上げる頂に歯を立てれば背がしなり、躯がびくりと跳ねる。割れ目を撫でていた手で内股を撫ればぴくりと小さく跳ねて逃げるようにずらしていった。タイルの上に投げ出された手が所在なさげに震えている。口に含んだままの実を布ごしに舐め上げれば吐息に混じって名を呼ばれた。

「っ…ぉ…ん」
「…ぅん?」
「…も……」
「なに?」

 刹那が何を言いたいのか分かっていながら聞こえないふりをする。悪趣味ではあると自覚しているが、普段のストイックなイメージしかない刹那が淫らに堕ちていく時がたまらなく興奮するのだ。躯中に渦巻いているのだろう熱にゆるりと首を振ってなんとか耐えようとするその姿に、ロックオンは小さく笑みを溢すと口を離した実に齧り付いた。

「あぅ!」

 無意識に逃げ打つ躯を押さえ込み今度は強く吸い上げると、小さく震える腕が頭を抱き締めてきた。すぐ近くに聞こえる乱れた吐息がますます劣情を駆り立てる。回された腕が少し緩んだところで一度口を離した。

「っは…あ…ぁふ…」

 まだ痛みを残しているであろうソコを舐め上げて宥めると切なげな吐息が聞こえてくる。反対側の胸に指を這わせて、固くしこった実を転がすと「違う」とでも言いたいように髪を引っ張られた。顔を上げれば上気した頬に瞳を潤ませた刹那がじっと見つめてきている。

「………」

 鼻先の触れ合う位置で睨み合う事数秒…折れたのはロックオンだ。

「…どうしてほしいって?」
「……ちゃん…と…」
「ちゃんと触れって?」
「……」

 頬に張り付く黒髪を掬い上げながら刹那の言わんとする言葉を的確に汲み取る。小さく頷く刹那に「ちょっとは素直になったかな」と淡く笑みを漏らした。涙なのか汗なのか分からない雫に口付けているとまた髪を引かれる。何か気に入らない事をしたか、と顔を覗き見ればまたじっと見つめてきていた。

「…口にもしろって?」
「……ん…」
−…ったく…

 今度ははっきりと頷いた刹那にロックオンは苦笑を浮かべてしまう。

−瞳は口よりもよく語る…ってか?

 タイルが擦れると傷つくから、と膝の上に乗せてインナーを捲り上げていく。腕を上げさせて脱がせやすいようにと手伝って貰い、ネックから頭を脱いだ所でぴたり、と止まった。

「…ろっくぉ…?」
「…刹那。」
「?」
「今日はこのまましようか。」
「え?」

 瞬いている間にも手首までずらしたインナーを器用に巻き付けて縛り上げてしまった。ぎょっとした刹那が解こうとしたが、水を吸った布は伸縮性によって更に絞まるだけだった。それでもどうにか解こうと躍起になっていると、手首をロックオンに掴み上げられる。

「何をっ」
「ん?何って…刹那に邪魔されないように。」
「っな…」

 にっこり微笑みを浮かべたロックオンがおもむろに立ち上がると高い位置にあるシャワーコックに手首を引っ掛けてしまった。背伸びしてもそこに差し込まれたシャワーが邪魔で抜けそうにない。唖然としていると脇腹へざわりとした感覚が広がった。彼の大きな両の手が宥めるようにさわさわと撫でている。

「っん!」
「すぐ気にならなくなるさ。」
「なにを…根拠にっ」
「何をってもちろん俺のテクニック。」
「ぅあッ!」

 つん、としこったままの実を摘み上げられてびくりと背を反らせる。まるで指に押し付けているようにも見えるその反応ににっこりと微笑みかけられて頬が赤くなった。離した実を摩るように動かす指から逃げようと躯を捩ると肩が壁にぶつかる。

「ひぅッ!?」
「それ以上下がらない方がいいぞ?タイルが冷たいだろ。」
「〜〜〜ッ」

 ぶつかったタイルの壁の冷たさに怯むと楽しそうな声が聞こえてきてわざとしたのだと理解する。それとともに暗に暴れるな、とも言い含められていて余計に悔しい思いをした。

「………」
「そんなに脹れんなよ。」


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