車を順調に走らせて家に到着したのは行きよりも早い時間だった。
 しかし、道中刹那の反応が徐々に鈍っていくのが少し気がかりだったが、初めての海で疲れたのかな?と特に心配はしなかった。眠ってしまったとて着いてから起こしても何の問題もない。

「着いたぞー?」
「………」
「?刹那?」

 車を止めて振り返れば刹那の反応が全くない。眠ってしまったか?と顔を覗き込もうにも逆を向いてしまっている。とりあえず車から下りて助手席側へ回れば戸を開いて表情を覗き込んだ。

「刹那?…熱でもあるのか?」

 覗き込んだ顔は頬が赤く染まり空ろに開く瞳も潤んでいるようだ。緩く組んでいるように見えた腕は体に巻きつき己の体を抱き締めているらしい。薄く開いた唇からも浅く呼吸が繰り返され、発熱しているように見えた。

「んっ…」
「…刹那?」

 そっと額に手を当てると過剰なほどに体をびくつかせた。その反応は明らかに違和感を与えるもので、眉を潜めるとふと脇に置かれてるコップを取り上げる。そこにはもうジュースは残っていないが、融けた氷が残っていた。蓋を開けて鼻を近づけるとフルーツの香りに混ざって僅かに香る異質な匂いがある。薔薇の香りといえばそうかもしれないが、ストローを上げた瞬間のとろりとした液体の動きとその瞬間に広がる濃厚な香りに頭がジンと痺れる感覚があった。

「刹那?俺が分かるか?」

 背筋に嫌な汗が伝うのを感じながらなるべく体に触れないようにしながら顔を覗き見ると、ゆったりと瞬きをして潤んだ瞳がゆるりと開かれる。その瞳に意思の強さを感じる光が見える事に多少安心したものの、はっきりと焦点を結べていない事に焦りを感じた。

「…ろ…っくお…」
「分かるか…体の状態は言えるか?」
「…から…だ…?」
「あぁ。」

 呂律の回っていない声ではあるが、とりあえずは反応が返せている。それだけでもまだマシなのか…と思いつつも現状を確認していかない事にはどう対処していいのかも分からない。焦る気持ちをどうにか抑えてじっと答えを待つ。

「…あつぃ…」
「他には?」
「…あ…つぃ…し…くる…し…」
「そうか…他に何かあるか?」
「…む…ずむ…ず…す…る…」
「むずむず?」
「お…なか…の…下の…ほう…」
「…あぁ…なるほどな…」

 催淫剤の一種だろうとは予測していたが、その考えは正しいようだ。どうやら本部のスタッフから聞いた話の『薬を使った』というのはこの事らしい。薬液を氷にして浮かべてしまえば最後の方になるまで分からない。例え渡されていたとしても融ける前に飲みきってしまっていれば薬をつかったとは気付かずに終わる。この事実を報せたいが今は何より刹那の方が気懸かりだ。なによりこのまま放置するには辛すぎるだろう。

「刹那、中に運ぶから。ちっと我慢しろよ?」
「…んんッ…」

 触られるだけでも相当な刺激になるのだろう、きゅうっと小さくなって震える体をどうにか抑えようとする刹那を出来るだけ早く運んでやろうと足で戸を閉めて抱え直すと小さいうめき声が聞こえる。

「俺の首に縋ってろ。まだマシだろ?」
「ッ…ぅん…」

 耳元で話すだけでぴくりと体を跳ねさせ熱い息を吐き出す刹那にどうにか少しでも楽なようにと促せば素直に聞き入れた。小さく震える腕が痛々しいのは確かだが、それに反して体の奥で疼く本能に己の性を恨んでしまう。とりあえず風呂場に運び風邪を引かせるわけにもいかないので温めの湯を出して室内を暖める。あとはバスタブの中に下ろしてやって熱が引くのを待つくらいしか出来ないな、と判断するとタブの中にそっと下ろそうとした。…が…

「おい…刹那?」
「…ッ…ッ…」
「離せって…」
「…やッ…」
「ちゃんと傍にいてやるから…」
「…ゃだッ…離さ、ない…でッ…」

 ますますぎゅっと掴む両手をどうにか離させようとするが幼子のようにぐずり始めた。声音に泣いているような音も混じるから更にロックオンは焦ってしまう。顔を確認しようにも必死にすがり付いている状態では満足に出来ない。大きく深呼吸をして自分の理性を奮い立たせると離そうとしていた腕でそっと背中を包み込んでやる。

「これで…いいか?」
「ぅ…んッ…」

 どのくらいそうしていたか分からない。けれど浴室が湯気でしっとりと湿り気を帯び、髪が頬に張り付く頃刹那の腕からふと力が抜け落ちた。けれど抱き締める体の震えは治まっていない。訝しげに思いつつ、もしかして気を失ってしまったのかとそっと腕を弛めるとぴくっと反応が返ってくる。なんとか腕を動かしたいのか、思うように動かない腕に焦れて指先が背中を引っ掻いてきた。

「…〜ッ…〜〜ッ…」
「刹那…離さないから…顔…見せてみろ…」

 離される不安に必死になってしがみ付こうとしているのだと気付いたロックオンがそう諭してやれば、引っ掻いていた指先の動きが止まり聞こえていた小さな呻き声も止んでしまった。そっと腕を動かして首を支えるように回して頬に張り付いた髪を掬い上げる。見てはいけない、とどこかで警報を発している…しかし掬い上げる指先は止まらなかった。

「…せつ…な…」
「…ぁ…ふ…」

 髪を掬い上げる指先に反応したのかぴくりと肩が跳ねた。己の手に覆われていた顔が露になると思わず生唾を飲み込んでしまう。
 上気した頬に張り付く黒糸の髪…とろりと熱に浮かされた瞳は水の膜が張り蘇芳の瞳をガーネットのように煌かせる。薄く開かれた桃色の唇から見え隠れする熟れたサクランボのような舌が呼吸の度に小さく動き何かを誘い込むようだ。前髪から伝い落ちる水滴がつぅっと肌の上を滑り落ち首筋から鎖骨を通って服の中へと消える。腕に抱かれた体からは完全に力が抜け落ちているのにその瞳に宿る光の強さは変わらない。親指で瞼をなぞれば素直に閉じる眼に見とれていると頬に触れる手へ凭れるような動きを見せる。手を逃がすことなくそっと頬を包むように押し当ててやるとほわりと小さく表情が動き笑みを浮かべたようだった。

「…ろっく…お…ん…」

 うっとりと開かれた瞳に魅入れば舌っ足らずの声で呼ばれ…何かが切れた音を聞いた気がした。

「刹那…楽になる方法…教えてやろうか?」

 頬を滑って唇をなぞれば指先に熱い吐息がかかる。その熱に背筋を震えさせればゆっくりと瞬きを繰り返した刹那の瞳が少しの間閉じられてしまった。じっと待っていればふるりと睫毛を揺らして開かれる。

「…おし…ぇて…」
「…後悔…するなよ…?」
「…ん…」

 懺悔をするように額に口付けを落としたロックオンはバスタブに下ろした半身を抱え上げる。初めての相手に浴室では体が痛むだろうとベッドルームに運んでやると床に雫が落ちて歩いた跡を作り出した。ベッドに刹那を下ろすと充分に湿気を含み重みを増したシャツを脱ぎ捨て刹那のパーカーに手をかける。肌に張り付き脱がしにくくはなっているが、少しずつ浮かすようにしていけば思ったよりもすんなりと脱がせられた。ぼんやりと見上げる瞳に笑みを向けて手袋を脱がしにかかる。出来るだけ早くとは思うのにべったりと張り付く皮が思うように取れなかった。ぐっと力を込めながら捲っているとするりと細い指が絡みついてくる。

「刹那?」
「て…つ…だう…」

 手の平と皮の隙間に指が入り込んでくるので先ほどよりも脱がせやすくなった。漸く片方脱げるともう片方も、と刹那の指が絡まってくるのを待ってから脱がせにかかった。両手が開放されると片方の手に絡まったままの指に己の指を絡めて甲に口付けを落とす。

「優しくしてやるからな…」

 きっと今から何をするのか分かっていないだろう刹那に言い聞かせてやってから覆いかぶさるように体を倒した。こつりと額を当ててじっと瞳を見つめると何かの暗示にかかったように瞳を閉じるから誘われるように唇を重ねる。

「っふ…んん…」

 鼻にかかる声にうっすらと笑みを浮かべると僅かに開いたままの隙間から舌をねじ込む。奥に縮こまったままの舌を突付けばそろりと伸ばされるから表面をぬるりと撫でて絡め取った。掬い上げるように撫で上げては擽るように突付くとどれにも敏感に反応を返してくるのに気を良くして、脇腹に手を沿わせれば背がびくりと仰け反った。キャミソールをたくし上げて唇を一度開放すると銀糸が伸びて宙でぷつりと切れる。

「刹那…腕上げて…」
「っは…ん…」

 さっきよりも紅潮させた頬で荒々しく呼吸を繰り返す刹那にそっと呼びかければのそりと腕が上がった。「いい子」と呟いてキャミソールを脱がせてしまうと首の後ろで蝶結びになっている布の端を引いて解いてしまう。両手で躯を摩るように首元から鎖骨、胸と移動していると小さく呼ばれる声を聞いた。

「うん?」
「さっき…の…してほしぃ…」
「口づけ?」
「ん。」

 完全に熔け切った表情をしてはいるが刹那からのおねだりは滅多に聞けないだけあってロックオンとしても聞いてやりたいところだが、今両手が挿しかかろうとしている小さい果実を口に含みたいという欲望が捨てきれないでいる。どうしたものか、と逡巡をしてふと一つ案を思い浮かべると荒い呼吸を繰り返す唇に指を押し当てた。

「刹那…口は今から別のトコに使うからさ…指で代わりにしてくれない?」
「ゆ…び…?」
「そ。あーん、ってしてみな?」
「…ぁ…」
「ん、いい子。」

 素直にぱかっと開いた口に舌の上を滑らせながら人差し指を差し込めば震えた息が吐き出される。指先でくるくるとと円を描くと瞳が細められるからロックオンも笑みを浮かべてしまう。

「しゃぶってごらん?」
「…んぅ…」
「歯を立てずに…そう…そのまま…」

 ちゅぅ…と音を立てる唇から指を抜けてしまわない程度まで引き抜くとくぐもった声がする。唇が指先を食むのに笑みを深めながら閉じてしまった歯を少し押してやれば素直に開くからまた中へ押し込むと絡まる舌の上を滑っていった。第二関節くらいまで埋めて軽く出し入れすると眉間に皺が刻まれ眉尻が下がっていく。ちゅぷっと音をさせて引き抜くと指を追うように顎が反らされる。

「これで代わり…いい?」
「ん…いぃ…」

 「だからちょうだい?」と言っているように口が開かれるのに目尻へキスを落として要望通り指を与えてやると、離したくないと言わんばかりに手まで添えられる。それに今度は苦笑を浮かべて解かれたビキニの布を食むとぺろりと捲った。まだ膨らみ始めたばかりだろう、その小さな頂には色濃く立ち上がった実が存在を主張しており齧り付けと言わんばかりだ。舌先でころりと転がしてみると上からくぐもった声と掴む手がきゅっと力を強める。ちゅうっと吸い付けばびくりと仰け反る背に笑みを漏らし、もう片方に指を這わせた。

「あぅ…ふっ…んん」
「気持ちいい?」
「んっ…イ…イ…」

 ふるりと震えては胸を押し付けるように仰け反る背に、実へ歯を立てたり舌先で擽るように舐めてはくっと押しつぶすと甘えるような声が漏れる。ロックオンの指が口の中で往ったり来たりを繰り返していたかと思えば喘いで開いた口からもう1本増やされ舌を挟まれると擽るように擦りあわされた。そうしている間にも胸を弄っていた唇は腹を辿りヘソを擽ってミニスカートの淵へと辿り着く。

「脱がせるぞ?」
「ぁ…ふ、ん…」

 もじもじと足を擦り合わせていたのに気付かれたのか、合わせた太ももの谷間を指で撫で上げられてふるっと躯を震わせると耳元でそっと囁かれた。躯中を渦巻く熱から開放されるのならどうとでもしていい、と半分投げやりになりながらも頷くと頭を撫でる代わりに舌を撫でられる。

「ひゃ…ぅ…」

 僅かに腰を浮かせるように言われて浮かせれば器用にも彼の片手はアンダーを纏めて脱がせてしまう。外気に触れた肌寒さにぴくりと震えれば宥めるように腰骨へ口付けを施された。足を開くようにと裏腿を撫でられ羞恥に晒されながらも触れる指のくすぐったさに足の力を弛めてしまえばぐいっと容赦なく開かれる。

「ぅやっ…ん!」
「いい子だから…我慢。」

 開いた足の間に体を滑り込ませながらロックオンの指が言葉を紡ごうとする舌を押さえつけ、彼の熱い舌が耳を擽る。そうして抵抗する躯を難無く押さえつけられて自然と溢れた涙を舐めとられた。

「ぁ…やぁ…」

 くちゅっと濡れた音を立てて口の中から指が離れていくのに、爪を立てて抗議を示せば口の端から垂れてしまった唾液をも舐められる。視界に彼の顔を写せば普段見せる笑みとは別の笑みで見下ろしてきていた。

「口…寂しい?」
「ん…さみし…」
「ちょっとだけ我慢出来る?」
「やぁ…」
「大丈夫…口に咥えてられなくしてやるから。」

 そう言って微笑みを浮かべる彼の瞳にぞくりと走る背中の感覚が何なのか分からずにこくりと頷いた。


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口から開発しちゃうとかって…兄さん…マニアック??←

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